猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
なにをしても人間の頃のようにできないのはわかったし、自分が健一の仕事を増やしてしまうのは嫌だった。

ミーコがなにか失敗しても健一は決して怒らないし、捨てられる心配もない。
でも、できるだけいい子でいることに決めたのだ。

尚美は健一が玄関から出ていったことを見届けると、すぐに窓辺に置いてあるキャットタワーへ上がった。
ここからは下の大通りを見ることができる。

しばらく見ていると駐車場から健一の車が出てきて、会社のある方向へと走っていく。
尚美は車が見えなくなるまで見送って、それから自分のクッションへと戻った。

ふかふかとした感触は心地よくて、ここで丸まっているとすぐに眠くなってくる。
健一が仕事をしている間に自分は昼寝をするなんてと申し訳ない気持ちになる。

だけど人間の頃だったら味わうことのできなかった、平日の昼寝はとても心地よくて気分もいいことを知ってしまった。

尚美はそのままトロトロと目を細め、そして夢の世界へと入っていったのだった。

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