嘘と恋とシンデレラ
(……そんなのだめだ)
わたしはきつく拳を握り締める。
真偽はともかくとしても、星野くんをそんな目には遭わせられない。
愛沢くんに対してもう少し深く追及するとしても、星野くんに危険が及ばない時と場所を慎重に選ばないと。
────そんなことを考えながら繕うように他愛もない話をしているうちに、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
愛沢くんとの時間を確保するのはきっと難しくない。
タイミングを見計らって、また聞いてみよう。
「じゃあ、俺戻るな。またあとで」
頷いて手を振り返したものの、その言葉は流れることなくわたしの心に引っかかった。
(……“あと”?)
思わず苦い気持ちになる。
気の抜けない時間をまた強いられる羽目になりそうで。
あとで、っていつだろう。
昼休み? 放課後?
まさか、次の休み時間?
果たして彼は授業が終わるごとにわたしの元へ来ては、毎回チャイムが鳴るまで戻ろうとしなかった。
片時も離れることなく、目の届く範囲に────それはもしかすると、こういう意味だったのかもしれない。
(こんなの……)
まるで、監視されているみたい。
“見守る”なんて生易しい響きでは足りないような圧がある。
内心青ざめながら奇妙な居心地の悪さを覚えたが、何も言えないまま昼休みを迎えてしまった。
例によって教室へ来た愛沢くんと、否応なしに一緒に昼食をとることになる。
わたしが感じている窮屈さなんて知る由もなく、彼は終始機嫌がよさそうだった。
恐らく放課後も解放してはくれないだろう。
(これじゃとても星野くんのところになんて行けない)
あんなことを言っておきながら、星野くんと帰ることを許してくれるとは思えない。
それに、彼が愛沢くんと直接会って、今朝みたいにぶつかることは避けたかった。
今のうちに、一緒に帰れなくなった旨を連絡しておかなくちゃ。
【ごめん! 今日は一緒に帰るの難しそう】
そう打ち込んで送信した瞬間、手の中からスマホが消えた。
「え……」
驚いて顔を上げる。
それは愛沢くんに取り上げられていた。
「何してんの?」
「……別に、何ってわけじゃないけど」
責めるような口調で問われ、むっとしてしまう。
返した言葉と声に図らずもここまでの不満が乗った。
画面を見た彼はうっとうしそうに目を細め、素早く何やら操作する。
「ちょっと!」