エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~小説版
「あっ、信号変わっちゃうよ!」
キスされるのを期待したわけじゃない。
それでも、勘違いしてしまった自分が恥ずかしくって、それを誤魔化すみたいに私は点滅しだした横断歩道に向かって走り出した。
「走ったら危ないよー」
誤魔化されてくれたのか、私の気持ちなんてお見通して乗ってくれたのか、走る私の後ろから幸夜くんの声が聞こえてくる。
横断歩道に踏み込んで、点滅が消えるまでに十分渡り終えられるはずだった。
幸夜くんは渡れないかもしれないけど、横断歩道の向こうでまた信号が青に変わるのを待っていればいい。
そうしてる間に、私の赤くなった顔も冷めるだろうしちょうどよかった。
でも――
もう少しで渡り終えるっていうとき、私の目と耳を轟音と閃光が貫いた。
「きゃあっ!」
雷が落ちた!? そんなことを考える暇もない衝撃に、私は思わず足を止めていた。
「珠子ちゃん、危ない!」
閃光に目がくらみ轟音で耳鳴りがする向こうで、幸夜くんの声を聞いた気がする。
強い力で腕を引かれ、後ろによろめき傘が手を離れる。
驚いて見開いた私の目に、取り落とした傘が猛スピードで突っ込んできたトラックに弾き潰されるのが飛び込んできた。
私の腕を引いて助けてくれたのは幸夜くんだった。
幸夜くんがいなかったら……トラックが走り去った後に残った、赤い布と変形した骨組み。
それはきっと、私の血と骨だった。
震える私の肩をそっと幸夜くんが抱いて、信号が赤に変わる前に私を横断歩道から導いてくれた。
「大丈夫。大丈夫だから」
震える私に、幸夜くんが優しく声をかけてくれる。
濡れないように、そっと傘を差してくれる。
――昨日も、こんなことがあった。
昨日は、幸夜くんじゃなくって咲仁くんだったけど。
昨日は、トラックじゃなくて植木鉢だったけど。
――十六歳って、厄年じゃないよね……?
震える私の手を、そっと幸夜くんが握り締めた。
キスされるのを期待したわけじゃない。
それでも、勘違いしてしまった自分が恥ずかしくって、それを誤魔化すみたいに私は点滅しだした横断歩道に向かって走り出した。
「走ったら危ないよー」
誤魔化されてくれたのか、私の気持ちなんてお見通して乗ってくれたのか、走る私の後ろから幸夜くんの声が聞こえてくる。
横断歩道に踏み込んで、点滅が消えるまでに十分渡り終えられるはずだった。
幸夜くんは渡れないかもしれないけど、横断歩道の向こうでまた信号が青に変わるのを待っていればいい。
そうしてる間に、私の赤くなった顔も冷めるだろうしちょうどよかった。
でも――
もう少しで渡り終えるっていうとき、私の目と耳を轟音と閃光が貫いた。
「きゃあっ!」
雷が落ちた!? そんなことを考える暇もない衝撃に、私は思わず足を止めていた。
「珠子ちゃん、危ない!」
閃光に目がくらみ轟音で耳鳴りがする向こうで、幸夜くんの声を聞いた気がする。
強い力で腕を引かれ、後ろによろめき傘が手を離れる。
驚いて見開いた私の目に、取り落とした傘が猛スピードで突っ込んできたトラックに弾き潰されるのが飛び込んできた。
私の腕を引いて助けてくれたのは幸夜くんだった。
幸夜くんがいなかったら……トラックが走り去った後に残った、赤い布と変形した骨組み。
それはきっと、私の血と骨だった。
震える私の肩をそっと幸夜くんが抱いて、信号が赤に変わる前に私を横断歩道から導いてくれた。
「大丈夫。大丈夫だから」
震える私に、幸夜くんが優しく声をかけてくれる。
濡れないように、そっと傘を差してくれる。
――昨日も、こんなことがあった。
昨日は、幸夜くんじゃなくって咲仁くんだったけど。
昨日は、トラックじゃなくて植木鉢だったけど。
――十六歳って、厄年じゃないよね……?
震える私の手を、そっと幸夜くんが握り締めた。