エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~小説版
「珠子ちゃん、どうしたの? 大丈夫!?」
「大丈夫! 足が滑りそうになっただけ!」
騒がしい足音の後に聞こえてきたのは幸夜くんの声だった。私の悲鳴に飛んできてくれたみたいで、申し訳ないやら恥ずかしいやらで複雑。まさか本当のことを言えるわけもなくて、そう言って誤魔化した。
「……幸夜、着替え中なんだが」
「なにを今更。僕と兄さんの仲じゃない」
私に続いて幸夜くんにまで半裸を見られた咲仁くんが苦情を言っていたけど、幸夜くんは軽く流していた。
「怪我してなぁい? なにかあったら、すぐに呼んでね」
「う、うん。大丈夫。ありがとう」
曇り戸に幸夜くんの影が映って、優しく声をかけてくれる。嘘をつくのは気が咎めるけど、その優しさを受け止める。
私の返事に満足したようで幸夜くんは立ち去って行った。
曇り戸越しに、私と咲仁くんだけが残される。
「俺はちゃんと声かけたからな……」
「シャワー中に聞こえるわけないじゃん!」
呆れたように言われても、自分に非があるとは思えなかった。
他にも客間とかいろいろあるのに、わざわざ私がシャワー浴びてるところで着替える方が悪いと思う。
「まあ、安心しろ。オマエの平べったい体に興味なんかないから」
「そういう問題じゃない!」
大声で怒鳴りたかったけど、また幸夜くんが来るかもと思うと控えめになるしかなかった。
怒りと羞恥で手が震える。
興味がないからって見られてセーフな気持ちにはならないし、体型わかるぐらいにはしっかり見たって言われてるようなものだし、本当に本当に……!
お風呂場の床に座り込んで、顔を覆ってジタバタしてしまう。
叫びだしたいような気持ちを抑えながら、呼吸を整える。
「……怪我とかは、してない?」
温まった体が少し冷えてきて、それにつられて頭も少し冷えてくる。
今更見なかったことには出来ないし、恥ずかしがっていても始まらない。
見なかったことに出来ないのは、私も同じ。咲仁くんの、あの傷跡――古そうだったし、さっきのライオンにつけられた物ではないとは思うけど気がかりだった。
「そんなヘマはしない」
扉の向こうから聞こえてくる、平静な声に少し安心する。
「……助けてくれて、ありがとう」
お風呂の戸を細く開けて、体は見えないように顔だけ覗かせる。ちゃんと、目を見てお礼を言いたかったから。
「なに。お礼に見せてくれんの?」
見えたのは、いじわるそうな笑顔。
「見せるわけないでしょ!」
扉を勢いよく閉めて憤慨していると、咲仁くんが声をかけてくる。
「俺の力は戦闘向きじゃない。実際に戦ったのは、ほとんど幸夜だ。礼を言うなら、アイツに言ってやれ」
「うん……でも、ありがとう」
すぐそこに、咲仁くんがいる。扉越しに、咲仁くんの気配を感じていた。
「大丈夫! 足が滑りそうになっただけ!」
騒がしい足音の後に聞こえてきたのは幸夜くんの声だった。私の悲鳴に飛んできてくれたみたいで、申し訳ないやら恥ずかしいやらで複雑。まさか本当のことを言えるわけもなくて、そう言って誤魔化した。
「……幸夜、着替え中なんだが」
「なにを今更。僕と兄さんの仲じゃない」
私に続いて幸夜くんにまで半裸を見られた咲仁くんが苦情を言っていたけど、幸夜くんは軽く流していた。
「怪我してなぁい? なにかあったら、すぐに呼んでね」
「う、うん。大丈夫。ありがとう」
曇り戸に幸夜くんの影が映って、優しく声をかけてくれる。嘘をつくのは気が咎めるけど、その優しさを受け止める。
私の返事に満足したようで幸夜くんは立ち去って行った。
曇り戸越しに、私と咲仁くんだけが残される。
「俺はちゃんと声かけたからな……」
「シャワー中に聞こえるわけないじゃん!」
呆れたように言われても、自分に非があるとは思えなかった。
他にも客間とかいろいろあるのに、わざわざ私がシャワー浴びてるところで着替える方が悪いと思う。
「まあ、安心しろ。オマエの平べったい体に興味なんかないから」
「そういう問題じゃない!」
大声で怒鳴りたかったけど、また幸夜くんが来るかもと思うと控えめになるしかなかった。
怒りと羞恥で手が震える。
興味がないからって見られてセーフな気持ちにはならないし、体型わかるぐらいにはしっかり見たって言われてるようなものだし、本当に本当に……!
お風呂場の床に座り込んで、顔を覆ってジタバタしてしまう。
叫びだしたいような気持ちを抑えながら、呼吸を整える。
「……怪我とかは、してない?」
温まった体が少し冷えてきて、それにつられて頭も少し冷えてくる。
今更見なかったことには出来ないし、恥ずかしがっていても始まらない。
見なかったことに出来ないのは、私も同じ。咲仁くんの、あの傷跡――古そうだったし、さっきのライオンにつけられた物ではないとは思うけど気がかりだった。
「そんなヘマはしない」
扉の向こうから聞こえてくる、平静な声に少し安心する。
「……助けてくれて、ありがとう」
お風呂の戸を細く開けて、体は見えないように顔だけ覗かせる。ちゃんと、目を見てお礼を言いたかったから。
「なに。お礼に見せてくれんの?」
見えたのは、いじわるそうな笑顔。
「見せるわけないでしょ!」
扉を勢いよく閉めて憤慨していると、咲仁くんが声をかけてくる。
「俺の力は戦闘向きじゃない。実際に戦ったのは、ほとんど幸夜だ。礼を言うなら、アイツに言ってやれ」
「うん……でも、ありがとう」
すぐそこに、咲仁くんがいる。扉越しに、咲仁くんの気配を感じていた。