エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~小説版
「……僕らは、神話の神々の化身なんだ」
幸夜くんは言いにくそうに、俯きがち言う。
「星座にもなってるから、ちょっとは聞いたことあるかな? ギリシア神話として語られる世界の神様」
――神様。
ファンタジーな話をされる覚悟はしていたけれど、突拍子もない話に現実感がわかない。
「僕はエピメテウス」
「俺はプロメテウス。人類に炎を与えた先見の神――といっても、ピンとこないだろうな」
幸夜くんと咲仁くんが名乗ってくれるけど、咲仁くんが言うみたいに横文字の名前を言われてもよくわからない。
「花と榴の方が、日本じゃ有名だろ。榴は冥府の神ハデス、花はその妻ペルセポネだ」
咲仁に紹介されて、花が恐縮するように肩をすくめる。
ハデス――さすがにその名前は私でも知っていた。
ゲームとかアニメとかでよく登場してくるメジャーなギリシア神話の神様。
ペルセポネも、乙女座のモデルになった女神様だって聞いたことがある。
「知ってる、けど……」
けど、やっぱり急にそんなこと言われてもどう反応したらいいのかわからない。
神話の神様だなんて言われても実感がわかなくて、花と榴先輩が恋人じゃなくて本当は夫婦だなんて、そっちの方がまだ現実味のある話としてインパクトがあった。
「知っててくれて光栄だが、今回の件、俺たちはそう深くは関わっていない。俺らはただ、パンドラの魂を今世に運んできただけだ」
榴先輩が補足するように言ってくる。
新しく出てきた横文字の名前。その名前にも、聞き覚えがあった。
パンドラ――パンドラの箱――災いを封じた箱を開けてしまい、世界に災厄を招いてしまった女性の名前。
災いが飛び出した後、箱の中には希望が残っていたという神話は知っている。
「パンドラは、神々に全てを与えられた人類最初の女性。地上で暮らす僕エピメテウスの元に、最高神ゼウスから贈られた花嫁」
幸夜くんが私の手を取り、私の知らない神話の話をする。
幸夜くんの色の薄い瞳が、真っ直ぐに私を捉えて目が離せない。
そして幸夜くんは、今までの話の中で最も信じられないことを告げた。
「珠子ちゃん。珠子ちゃんは僕の妻、パンドラの生まれ変わりなんだよ」
私がパンドラの生まれ変わりで、私の前世は幸夜くんの妻……
信じられない話だったけど、幸夜くんがなんで私なんかを? という疑問の答えは見つかった。幸夜くんは、私じゃなくて……
「災厄は解き放たれてしまったけれど、希望はまだ君の中に残ってる」
幸夜くんが私の前にひざまずき、恭しく私の手の甲に口付けをして告げる。
「君は――希望の花嫁なんだ」
幸夜くんは言いにくそうに、俯きがち言う。
「星座にもなってるから、ちょっとは聞いたことあるかな? ギリシア神話として語られる世界の神様」
――神様。
ファンタジーな話をされる覚悟はしていたけれど、突拍子もない話に現実感がわかない。
「僕はエピメテウス」
「俺はプロメテウス。人類に炎を与えた先見の神――といっても、ピンとこないだろうな」
幸夜くんと咲仁くんが名乗ってくれるけど、咲仁くんが言うみたいに横文字の名前を言われてもよくわからない。
「花と榴の方が、日本じゃ有名だろ。榴は冥府の神ハデス、花はその妻ペルセポネだ」
咲仁に紹介されて、花が恐縮するように肩をすくめる。
ハデス――さすがにその名前は私でも知っていた。
ゲームとかアニメとかでよく登場してくるメジャーなギリシア神話の神様。
ペルセポネも、乙女座のモデルになった女神様だって聞いたことがある。
「知ってる、けど……」
けど、やっぱり急にそんなこと言われてもどう反応したらいいのかわからない。
神話の神様だなんて言われても実感がわかなくて、花と榴先輩が恋人じゃなくて本当は夫婦だなんて、そっちの方がまだ現実味のある話としてインパクトがあった。
「知っててくれて光栄だが、今回の件、俺たちはそう深くは関わっていない。俺らはただ、パンドラの魂を今世に運んできただけだ」
榴先輩が補足するように言ってくる。
新しく出てきた横文字の名前。その名前にも、聞き覚えがあった。
パンドラ――パンドラの箱――災いを封じた箱を開けてしまい、世界に災厄を招いてしまった女性の名前。
災いが飛び出した後、箱の中には希望が残っていたという神話は知っている。
「パンドラは、神々に全てを与えられた人類最初の女性。地上で暮らす僕エピメテウスの元に、最高神ゼウスから贈られた花嫁」
幸夜くんが私の手を取り、私の知らない神話の話をする。
幸夜くんの色の薄い瞳が、真っ直ぐに私を捉えて目が離せない。
そして幸夜くんは、今までの話の中で最も信じられないことを告げた。
「珠子ちゃん。珠子ちゃんは僕の妻、パンドラの生まれ変わりなんだよ」
私がパンドラの生まれ変わりで、私の前世は幸夜くんの妻……
信じられない話だったけど、幸夜くんがなんで私なんかを? という疑問の答えは見つかった。幸夜くんは、私じゃなくて……
「災厄は解き放たれてしまったけれど、希望はまだ君の中に残ってる」
幸夜くんが私の前にひざまずき、恭しく私の手の甲に口付けをして告げる。
「君は――希望の花嫁なんだ」