エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~小説版
*
気がつくと、私は自分のベッドでうつ伏せになって眠っていた。
頭が痺れるようにぼうっとして、目が腫れているのがわかる。あの後、部屋にこもって泣いているうちに泣き疲れて眠ってしまったみたい。
結局、部屋のカギは買えなかったけど、幸夜くんも咲仁くんも他の二人も誰も部屋には来なかった。
気を使われている。
意味不明な出来事に巻き込まれて、意味不明な前世の話とか神様とか馬鹿みたいな話をされて、でも体験したことが夢物語じゃないと突き付けてくる。混乱した私が落ち着くまで、そっとしていてくれているんだと、みんなの優しさはわかっている。
でも、わかっているだけ。
気持ちは落ち着かない。こんな現実、受け入れられるわけがなかった。
「はぁ……」
無意識にため息が出る。
泣いたせいで酷く喉が渇いていた。息をするだけでもかさついて、鼻の奥がツンとする。
明かりのついていない部屋の中で、蛍光塗料の塗られた時計を見上げる。
もう夜中の二時だった。
耳を澄ませてみても、部屋の外から物音や喋り声はしない。花と榴先輩はもう帰ったんだろうか。双子も、もう寝ているんだろう。またリビングで寝ているのか、それとも私がいないから客間で寝ているのかもしれない。
二人と顔を合わせたくはなかった。
賭けだったけど、喉の渇きに負けて私はベッドを下りた。
物音を立てないようそっと扉を押して、廊下を覗いて――声が出そうになった。
薄く開けた扉の隙間から、幸夜くんの顔が見えた。
廊下に座り込んで壁に背中を預けている。でも目は閉じていて、布団に包まっている。
部屋には入ってこない。でも、傍にいてくれた。
前世の私はパンドラで、エピメテウスっていう神様だった幸夜くんの奥さんだっていう。前世の私は、幸夜くんのことが好きだったのかな? 好きだったんだろうな……
睫毛が長い幸夜くんの寝顔を見ながら、私はそんなことを考えた。
気がつくと、私は自分のベッドでうつ伏せになって眠っていた。
頭が痺れるようにぼうっとして、目が腫れているのがわかる。あの後、部屋にこもって泣いているうちに泣き疲れて眠ってしまったみたい。
結局、部屋のカギは買えなかったけど、幸夜くんも咲仁くんも他の二人も誰も部屋には来なかった。
気を使われている。
意味不明な出来事に巻き込まれて、意味不明な前世の話とか神様とか馬鹿みたいな話をされて、でも体験したことが夢物語じゃないと突き付けてくる。混乱した私が落ち着くまで、そっとしていてくれているんだと、みんなの優しさはわかっている。
でも、わかっているだけ。
気持ちは落ち着かない。こんな現実、受け入れられるわけがなかった。
「はぁ……」
無意識にため息が出る。
泣いたせいで酷く喉が渇いていた。息をするだけでもかさついて、鼻の奥がツンとする。
明かりのついていない部屋の中で、蛍光塗料の塗られた時計を見上げる。
もう夜中の二時だった。
耳を澄ませてみても、部屋の外から物音や喋り声はしない。花と榴先輩はもう帰ったんだろうか。双子も、もう寝ているんだろう。またリビングで寝ているのか、それとも私がいないから客間で寝ているのかもしれない。
二人と顔を合わせたくはなかった。
賭けだったけど、喉の渇きに負けて私はベッドを下りた。
物音を立てないようそっと扉を押して、廊下を覗いて――声が出そうになった。
薄く開けた扉の隙間から、幸夜くんの顔が見えた。
廊下に座り込んで壁に背中を預けている。でも目は閉じていて、布団に包まっている。
部屋には入ってこない。でも、傍にいてくれた。
前世の私はパンドラで、エピメテウスっていう神様だった幸夜くんの奥さんだっていう。前世の私は、幸夜くんのことが好きだったのかな? 好きだったんだろうな……
睫毛が長い幸夜くんの寝顔を見ながら、私はそんなことを考えた。