エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~小説版
「嬉しい! どこ探しても売ってないんだもん」

 ネットで調べても出てこないし、限定品だったのかなって諦めてたのに。

「極秘ルートで入手いたしました〜」

 花は冗談めかして言うけど、本当に極秘ルートだったりするのかもしれない。
 それぐらい、見つからなかった。

「珠子! はぴば〜」

「これ、私たち! と、正美から」

 花からのプレゼントを見ていると、隣の席の芽依と駆け寄ってきた栞里もプレゼントを渡してくれた。

 二人が手渡してくれたのは、いい香りで有名なバスグッズのお店のギフトセットだった。

「ありがとう! お風呂が楽しみ〜」

 合同プレゼントなだけあって結構な数が入っていて、ラッピングの上からでも華やかな香りがしてくる。

「放課後、ケーキ食べに行くんでしょ?」

 芽衣と反対側の席。
 離席中の正美の席に座って、栞里がおしゃべりモードに入った。

「私たちも行きたかった! 塾じゃなかったらな~」

「私たちの分も楽しんできて」

 にこにこ笑う栞里と芽衣に挟まれて、私の席の前に立つ花と二人で返事をする。

「めっちゃ美味しいの食べてくるから!」

「写真送るねー」

 放課後、私は花と二人でケーキを食べに行く約束をしていた。
 芽衣と栞里と正美も誘ったけど、同じ塾に通う三人はNGだった。

「ねえねえ、聞いた!?」

 四人で話していると、慌てた様子の正美が教室に飛び込んできた。

「あ、正美ー。見当たんないから先プレゼント渡しといたよ」

「受け取りましたー。ありがとう!」

「あ、珠子! はぴばー!」

 芽衣の言葉にお礼を言うと、私に気が付いて正美もお祝いしてくれた。
 誕生日の朝って、これが大好き。
 みんなに会うたびにお祝いしてもらえて、幸せな気持ちになる。

「それで、なにを聞いたって?」

 首を傾げながら正美に聞くと、興奮気味に叫んだ。

「転校生!」

「こんな時期に? 珍しいね」

 だいたい長期休暇の後に入ってくることが多いから、こんな学期途中の転校生は人生で初めてだった。

「それがさあ、めちゃイケメンの帰国子女で、しかも双子なんだって!」

 正美は手足をバタつかせてはしゃいでいるけど、私は正反対に気持ちが凪ぐ。

 ――双子?

 どうしても脳裏を過ぎるのは今朝の二人。
 でも、そんなまさかね。

「あ、知ってる。さっき職員室で会ったよ」

 平然と言ってのける花に、正美は取って食いそうな勢いで迫る。

「どうだった!? イケメン??!!」

「うん。かっこよかったよ」

 その言葉に、今度は芽衣の表情が変わった。

「榴先輩と付き合ってる花が言うなら、間違いないね! うわあ、期待しちゃう~」

「榴先輩、イケメンだもんね」

 花は、この五人の中で唯一の彼氏持ちだった。
 三年の先輩で、陸上部のエース。
 色が黒くてスポーツマンって感じだけど体育会系の暑っ苦しさは全然なくて、ワイルドな感じもしてまあとにかくカッコイイ。

「うわ〜、楽しみ〜!!」

「うちの学校って生徒会長も素敵だし、イケメン率ますます上がっちゃうね!」

 盛り上がりを見せる三人を花はほほ笑ましそうに見ている。
 彼氏持ちの余裕を感じて、ちょっと嫉妬してしまう。
 でも、私も三人みたいに盛り上がる気持ちに離れなかった。
 ニコッと笑って不安を吹き飛ばそうとする私を、花が不思議そうに見ていた。
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