エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~小説版
「みんな席につけ〜」
そうこうしているうちにチャイムが鳴って、先生が教室に入ってきた。
慌ててそれぞれ自分の席に戻って、先生の話を聞く体制になる。
「もう噂になってるみたいだから、先に紹介しておく。転校生の二人だ」
先生が教壇に立つなりすぐに、噂の転校生の話になる。
左右の席で芽衣と正美が期待に胸を膨らませて、きゃあきゃあ言ってるのが聞こえてくるけど、私は別の意味で心臓が高鳴っていた。
ゆっくりと教室の扉が開いて――入ってきたのは、今朝の双子だった。
やっぱりっていう気持ちと、どうしてっていう気持ちとでぐちゃぐちゃになって、私は双子の方を見られなかった。
幸い私の席は窓寄りの後ろの方。
そんな目立つ場所じゃない。
気づきませんようにって祈っても、同じクラスになったんだからいつかはバレる。
分かっていても、そう祈らずにはいられなかった。
猫っ毛のイケメンとマスクのイケメンに教室は色めきたっている。
「イケメンが二人も……」
「このクラスでよかった……!」
左右の席で芽衣と正美が感激の声を上げている。
あんまり騒ぐと双子がこっちを見るかもしれないからやめてって言いたかったけど、言えるわけがない。
目立たないように一時間目の教科書で顔を隠しながら教壇の方を見ると、先生が黒板に「敷智咲仁」「敷智幸夜」と二人の名前を書いていた。
意外。
日本人だった。
「じゃあ、お兄さんの方から自己紹介よろしく」
「敷地咲仁です」
そう言われて応えたのは、マスクの方のイケメンだった。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
それだけ?
教室が続きを待って静まり返っても、マスクのイケメン咲仁くんは名前しか名乗らなかった。
会釈さえせずに仁王立ちしたまま、時間だけが過ぎていく。
「……じゃあ、弟くんもよろしく」
雰囲気を変えようとゴホンと咳ばらいをした先生が、猫っ毛イケメン幸夜くんの方に促す。
私にキスしてきた方だ――――
今朝のことを思い出して、顔が熱くなる。
赤くなってるんじゃないか心配になって、教科書に顔をうずめながら様子を伺う。
「敷智幸夜です」
お兄さんと同じように名前を名乗っただけなのに、幸夜くんの方はキラキラエフェクトがかかっている気がしてしまう。
マスクしたまま無表情だった咲仁くんと違って、ふんわり優しい笑みを浮かべて、どこからともなく黄色い悲鳴が聞こえてくる。
「両親の仕事の都合でずっとギリシャに住んでいました。日本に住むのは久しぶりなので、いろいろとわからないこと教えてください」
白い歯を見せて笑う姿を、このまま雑誌の表紙にしてしまっても違和感ないと思う。
「マジヤバイ……」
芽衣が顔を両手で押さえて足をじたばたさせているのが、視界の端に映った。
「高良珠子ちゃんとは婚約者なので、よろしくお願いします」
「は?」
幸夜くんはぺこりとお辞儀するのと同時に、衝撃発言を放った。
瞬間、思わず私の口から低い声が漏れた。
「ちょっと珠子! どういうことなのよ!?」
「二人と知り合いなの!? 婚約者って!?」
顔を覆っていたはずの芽衣の目が私を捉えて、反対の席からは正美の手が伸びてきて肩をつかまれた。
晴天の霹靂って、こういうことを言うのかな?
私は雷に打たれたみたいに硬直して、揺さぶってくる正美にされるがままになるしかなかった。
とっくに私に気が付いていたらしく、幸夜くんはウインクを投げてくる。
こんなキザな仕草も様になるなんて、イケメンってすごい……
「じゃあ、一番後ろに席用意してあるからそこで」
先生は幸夜くんの婚約者宣言をスルーして、普通にホームルームを始めてしまった。
廊下側の席に移動する最中も幸夜くんはニコニコ私に手を振ってくるし、クラスメイトたちも私たちのことを目を見開いて見ていた。
私はひたすら誰とも目を合わせないように俯いてい頭を抱えていることしか出来なかった。
そうこうしているうちにチャイムが鳴って、先生が教室に入ってきた。
慌ててそれぞれ自分の席に戻って、先生の話を聞く体制になる。
「もう噂になってるみたいだから、先に紹介しておく。転校生の二人だ」
先生が教壇に立つなりすぐに、噂の転校生の話になる。
左右の席で芽衣と正美が期待に胸を膨らませて、きゃあきゃあ言ってるのが聞こえてくるけど、私は別の意味で心臓が高鳴っていた。
ゆっくりと教室の扉が開いて――入ってきたのは、今朝の双子だった。
やっぱりっていう気持ちと、どうしてっていう気持ちとでぐちゃぐちゃになって、私は双子の方を見られなかった。
幸い私の席は窓寄りの後ろの方。
そんな目立つ場所じゃない。
気づきませんようにって祈っても、同じクラスになったんだからいつかはバレる。
分かっていても、そう祈らずにはいられなかった。
猫っ毛のイケメンとマスクのイケメンに教室は色めきたっている。
「イケメンが二人も……」
「このクラスでよかった……!」
左右の席で芽衣と正美が感激の声を上げている。
あんまり騒ぐと双子がこっちを見るかもしれないからやめてって言いたかったけど、言えるわけがない。
目立たないように一時間目の教科書で顔を隠しながら教壇の方を見ると、先生が黒板に「敷智咲仁」「敷智幸夜」と二人の名前を書いていた。
意外。
日本人だった。
「じゃあ、お兄さんの方から自己紹介よろしく」
「敷地咲仁です」
そう言われて応えたのは、マスクの方のイケメンだった。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
それだけ?
教室が続きを待って静まり返っても、マスクのイケメン咲仁くんは名前しか名乗らなかった。
会釈さえせずに仁王立ちしたまま、時間だけが過ぎていく。
「……じゃあ、弟くんもよろしく」
雰囲気を変えようとゴホンと咳ばらいをした先生が、猫っ毛イケメン幸夜くんの方に促す。
私にキスしてきた方だ――――
今朝のことを思い出して、顔が熱くなる。
赤くなってるんじゃないか心配になって、教科書に顔をうずめながら様子を伺う。
「敷智幸夜です」
お兄さんと同じように名前を名乗っただけなのに、幸夜くんの方はキラキラエフェクトがかかっている気がしてしまう。
マスクしたまま無表情だった咲仁くんと違って、ふんわり優しい笑みを浮かべて、どこからともなく黄色い悲鳴が聞こえてくる。
「両親の仕事の都合でずっとギリシャに住んでいました。日本に住むのは久しぶりなので、いろいろとわからないこと教えてください」
白い歯を見せて笑う姿を、このまま雑誌の表紙にしてしまっても違和感ないと思う。
「マジヤバイ……」
芽衣が顔を両手で押さえて足をじたばたさせているのが、視界の端に映った。
「高良珠子ちゃんとは婚約者なので、よろしくお願いします」
「は?」
幸夜くんはぺこりとお辞儀するのと同時に、衝撃発言を放った。
瞬間、思わず私の口から低い声が漏れた。
「ちょっと珠子! どういうことなのよ!?」
「二人と知り合いなの!? 婚約者って!?」
顔を覆っていたはずの芽衣の目が私を捉えて、反対の席からは正美の手が伸びてきて肩をつかまれた。
晴天の霹靂って、こういうことを言うのかな?
私は雷に打たれたみたいに硬直して、揺さぶってくる正美にされるがままになるしかなかった。
とっくに私に気が付いていたらしく、幸夜くんはウインクを投げてくる。
こんなキザな仕草も様になるなんて、イケメンってすごい……
「じゃあ、一番後ろに席用意してあるからそこで」
先生は幸夜くんの婚約者宣言をスルーして、普通にホームルームを始めてしまった。
廊下側の席に移動する最中も幸夜くんはニコニコ私に手を振ってくるし、クラスメイトたちも私たちのことを目を見開いて見ていた。
私はひたすら誰とも目を合わせないように俯いてい頭を抱えていることしか出来なかった。