せんぱいと
先輩、初めまして
雪side



「お、あの子可愛くね?」


「めっちゃ美人!」


「今年の1年レベル高いなぁ」


桜が舞う春の時期、学内では昨日入学式を済ませた新入生の話題で持ち切りだ

俺、三浦 雪(みうら ゆき)
今日から3年生になった俺は、そんな噂話を小耳に挟みつつ、廊下を通り抜けていた



「あの先輩格好良い・・・!」

「ちょ、イケメン過ぎ・・・!!」




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「雪、相変わらず人気だなぁ」


と。呑気にそう言ってくる男

西坂 陽向(にしざか ひなた)は俺の親友で

陽向もかなり視線を集めてると思うんだけど・・・


陽向は俺から見てもイケメンだ

ぱっちり二重に薄い唇
無造作に整えられた黒髪はサラサラと風で靡いている


去年の文化祭のミスコンでは1位と僅差で2位だったはず

ちなみに1位は俺



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「陽向、今日は機嫌が良いな」


いつもは学校に来ても「だるい」「帰りてぇ」しか言わない陽向が今日はどこか機嫌が良さげだ


「今日は遂に妹が登校してくるんだよ!」


と、今までにないくらいキラキラと笑顔を浮かべている陽向に

思わず気持ち悪い、と思ってしまった


そういや、陽向はかなりシスコンだったっけ・・・


妹の話をし始めると「可愛い」しか言わない



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「あ!!」


すると、ある1点に視線を向けた陽向は、凄い勢いで走っていく

何だ何だ・・・


「陽菜!!!」


陽向はガバッ、と効果音がつきそうな勢いでヒナと呼ばれた女の子に抱き着いた

おいおい・・・急に抱き着いたら周りが・・・


『きゃあああぁあ!!』

「に、西坂くんが・・・!」

「いやああ!!」


ほらな・・・



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「ちょっと、お兄ちゃん!」


ヒナと呼ばれたその子は嫌そうに顔を歪めながら陽向を引き剥がす

お兄ちゃん・・・?

ってことはこの子が陽向の妹か・・・?


「雪!こいつが俺の妹の陽菜だ!」


と、自慢げにそう言う陽向


陽向の妹ちゃんの見た目は、

黒縁メガネに色素の薄い茶色い髪が三つ編みのおさげ頭になっている


なんつーか・・・地味だな・・・

髪で顔ほとんど見えないし

「可愛いだろ!」



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・・・陽向の頭は少々おかしいのか?

お世辞でも可愛いとは思えない見た目だ


「陽菜、俺の親友の雪だ」

「陽菜ちゃんかな、三浦 雪です

よろしくね」


顔を覗き込みながらそう言うと


「に、ににに西坂、陽菜です・・・!!

し、失礼します・・・!」


何故か慌てた様子でそれだけ言って、パタパタと俺らの前から立ち去ってしまった



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「あー・・・陽菜は極度の人見知りなんだ」


陽菜ちゃんが走り去っていったほうを見つめながら苦笑いして陽向はそう言った

人見知りにしても、かなり酷い風に見えたが・・・


でも

陽菜ちゃんの声は凄く透き通ってて、綺麗だ





あの声は嫌いじゃない







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陽菜side



び、びっくりした・・・っ

お兄ちゃん突然お友達紹介してくるんだもん・・・!

思わず逃げてきちゃったよ・・・


それに、お兄ちゃんのお友達・・・

すっごく格好良かった

お兄ちゃんも格好良いのに、同じくらい格好良かった



「あ、陽菜いた〜」



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私の名前を呼ぶ声が聞こえ、振り返ると

そこには親友の天野 夏子(あまの なつこ)こと、なっちゃんが立っていた


「なっ、なっちゃああん!」

「あらあら、どうしたどうした」


ぎゅー、となっちゃんに抱き着くと、なっちゃんはぽんぽん、と私の頭を撫でる

なっちゃんとは幼稚園からの幼馴染で、私の唯一の友達


私と違って活発ななっちゃんはもう友達も出来てるんだろうなぁ・・・

なっちゃんは凄いやぁ・・・




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「さっきお兄ちゃんがっ・・・────」

「そんなことがあったのねぇ

陽向さん本当に陽菜のこと大好きよね」


先程の出来事をなっちゃんに話すと、クスクス笑いながらそう言った


「それにしても陽菜あんた・・・

やっぱりすっごい地味ね」


と、突然そんなことを言い出したなっちゃん


「だ、だってお兄ちゃんがこうしろって言うから・・・」

「まぁ陽向さんが言いたいことは分かるけど・・・」


この黒縁メガネとおさげ・・・お兄ちゃんにやれって言われてやったの

本当はこんな格好したくないのに〜・・・



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「ほら、今日は午前中だけで終わるしさ、教室行こう?」

なっちゃんにそう言われ、とぼとぼと教室へ足を進める

私、実は昨日体調崩してて入学式に出れてないの

だから今日が初めて教室に行く日・・・


「なっちゃん行きたくないよぉ〜」

「こら、またそんなこと言って

中学も毎日そんなこと言って結局友達出来なかったでしょ!」


ゔ・・・だって人と話すとどうしても緊張しちゃうんだもん・・・



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「ほら、着いたよ」


教室の前に着き、なっちゃんはそう言ってガラッとドアを開けた

ああ!まだ心の準備出来てないのに・・・!


「夏子おはよー」

「なっちゃんおはー!」


なっちゃんの腕に掴まりながら教室に入ると

教室にいた生徒数人が、なっちゃんに挨拶をしていて、なっちゃんもそれに「おはよ〜」と返す

なっちゃん凄い・・・!


「あれ、その子は?」


すると、2人組の女の子が私たちに近付いてそう言った



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「この子は陽菜、あたしの幼馴染!」

「へぇ!この子が!

私松田 伊織(まつだ いおり)!
伊織って呼んで!」

「私は赤石 玲(あかいし れい)

宜しくね」


は、話しかけられちゃったよ・・・

どうしよう・・・!

ぎゅう、となっちゃんの腕を掴む手に力を入れると


「この子、極度の人見知りなのよ〜」


と、なっちゃんは苦笑いしながらそう言った

せ、折角自己紹介してくれたから、私もしなきゃ・・・!



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「に、にに西坂 陽菜っ・・・ですっ」


っ・・・す、すっごい噛んじゃった・・・

すると、目の前の2人はきょとん、と目を丸くしていて

その直後


「あははっ、噛みすぎだよ!!」

「ははっ」


と、2人は大きく笑い始めた

笑われちゃった・・・どうしようなっちゃん・・・!


「宜しくね!陽菜」

「陽菜、宜しく」


2人はそう言って、笑顔を浮かべた

あれ、・・・今まではこんなオドオドした私の様子に引いて離れていく人ばかりだったのに・・・



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「・・・陽菜、良かったね」


なっちゃんは微笑みながらそう言ってくれて

なんだか嬉しくなった


「え、っと・・・伊織ちゃん、玲ちゃん

ありがとう・・・?」

「ははっ、なんで疑問形?」

「陽菜面白いね」


私の言葉にまた2人は笑い始めて

なんか、良い人・・・っ

人見知りの私が、友達出来たよ・・・っ



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「それにしても、このメガネなーに?

凄く地味じゃない!」

と、伊織ちゃんが私の顔を覗き込みながらそう言った

「あー・・・それは陽菜のお兄さんがさせたの

陽向さんっていうんだけど、シスコンなんだよねぇ」


伊織ちゃんの言葉になっちゃんがそう言ってくれて

なっちゃんが代言してくれた・・・!



「え・・・お兄さんって西坂 陽向さん!?」



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