幼なじみ、再瞬ローカルネットワーク
第4話「意識」
(俺、こんな夜中に、何やってるんだろう)
翔太は、机に備え付けの椅子にもたれかかりながら項垂れた。
翔太は華に付き合わされ、一緒にゲームをしていた。この有無を言わせず、人を巻き込む感じ、覚えがある。というか、昔も華はこんな感じだった。ちっとも変わっていないなと翔太は思い返した。
(何だか、胃が痛くなってきた)
とにかく、今日は父親が夜勤で居なくて良かったと、翔太はホッと胸を撫で下ろした。こんな夜中に、女子を部屋に連れ込んでるなんてバレたら……とそこまで考えて、翔太はハッとした。
(そうだよ、仁科、女じゃんっ)
うわっと、翔太は首元が熱くなる思いだった。華の勢いが凄すぎて失念していだが、今のこの状態、なんかヤバくない? とちらっと、翔太は華の方を見やった。
次の瞬間、華が「あーっ」と叫んだ。
「なっ、何だよ?」
「ヤバイ、死んじゃうっ、死んじゃう! 回復、回復ー!」
もう完全に華のペースだった。
***
(うう、背中が痛くなってきた)
華は翔太のベッドの反りに、もたれかかってゲームをしていだが、普段家では寝転がってゲームをしていた。いつもの体勢と違うので、身体がしんどくなってきたのだ。
華はゲーム機を持ったまま、おもむろに立ち上がった。
「翔ちゃん、ちょっとベッド使わせて」
そのまま華は、翔太のベッドに寝転んだ。翔太は華から昔の様に、下の名前で呼ばれた事にもギョッとしたが、自分のベッドに、平気で寝転ぶ幼馴染に、度肝を抜かれて、暫く動けなかった。
(こっ、こいつ!)
徐々に腹の底から、怒りや何かが湧き上がって、翔太は無意識に、華の腕を掴みそうになった。
その瞬間、華がまた叫んだ。
「バッテリー、バッテリーがあっ。充電器、充電器貸して!」
華は主導権を渡さなかった。ずっと華のターンだった。
***
(はあ、疲れた)
翔太は、台所でコップに麦茶を注ぎながら、ボーと居間を見渡した。時計が目に入る。
(もう、四時じゃん)
まるで、ジェットコースターに乗りっぱなしの疲労度だった。水分を補給した事で、翔太は少し頭が冴えてきた。
(俺は、一体何をやってたんだ。あいつ本当に、何なんだよっ)
せめてダウンロードが終わったら、華を家に帰すべきだった。華は何も考えてない様だが、やっぱどう考えても、今のこの状況はおかしい。だが、そんな事を考えてももう遅い。せめて今すぐ帰らせよう。
翔太はそう決心して、二階の自室前まで戻り、意を決してドアを開けた。華はゲーム機を掴んだまま、スースーと寝息を立てていた。
その瞬間、何かが翔太の中で、ブチッと切れた。
華の部屋着のショートパンツから、白い剥き出しの脚が伸びている。少し空いた胸元から、柔らかそうな胸の谷間が覗いていた。
もう、幼いあの頃とは全然違っていた。
翔太は寝ている華の前に歩み寄ると、そのままベッドの梁に膝を掛け、華に覆いかぶさった。
しなやかな首筋が目に入り、華の寝息を間近で感じる――
(こんな格好で、夜中に男の部屋に来て、ベッドに寝転がって、何もされないと思うなよ)
翔太は、窮屈そうに枕に押し付けられていた、華の眼鏡をそっと外した。成長はしたが、それは明らかに、自分の知っている幼馴染の顔だった。
そっと自分の唇を、華の唇に近づける――
「……しょうちゃん……」
翔太はその声に驚いて、思わず身を引いた。華が起きたのかと思ったが、そうじゃない。寝言だ。
昔はそう呼ばれていた。いつの間にか名字で呼ばれる様になって、関係も疎遠になった。正直ホッとしていた。このまま、疎遠のままで良かったのに。
翔太は華のその寝言に、何故だか胸を締め付けられた。
つづく
翔太は、机に備え付けの椅子にもたれかかりながら項垂れた。
翔太は華に付き合わされ、一緒にゲームをしていた。この有無を言わせず、人を巻き込む感じ、覚えがある。というか、昔も華はこんな感じだった。ちっとも変わっていないなと翔太は思い返した。
(何だか、胃が痛くなってきた)
とにかく、今日は父親が夜勤で居なくて良かったと、翔太はホッと胸を撫で下ろした。こんな夜中に、女子を部屋に連れ込んでるなんてバレたら……とそこまで考えて、翔太はハッとした。
(そうだよ、仁科、女じゃんっ)
うわっと、翔太は首元が熱くなる思いだった。華の勢いが凄すぎて失念していだが、今のこの状態、なんかヤバくない? とちらっと、翔太は華の方を見やった。
次の瞬間、華が「あーっ」と叫んだ。
「なっ、何だよ?」
「ヤバイ、死んじゃうっ、死んじゃう! 回復、回復ー!」
もう完全に華のペースだった。
***
(うう、背中が痛くなってきた)
華は翔太のベッドの反りに、もたれかかってゲームをしていだが、普段家では寝転がってゲームをしていた。いつもの体勢と違うので、身体がしんどくなってきたのだ。
華はゲーム機を持ったまま、おもむろに立ち上がった。
「翔ちゃん、ちょっとベッド使わせて」
そのまま華は、翔太のベッドに寝転んだ。翔太は華から昔の様に、下の名前で呼ばれた事にもギョッとしたが、自分のベッドに、平気で寝転ぶ幼馴染に、度肝を抜かれて、暫く動けなかった。
(こっ、こいつ!)
徐々に腹の底から、怒りや何かが湧き上がって、翔太は無意識に、華の腕を掴みそうになった。
その瞬間、華がまた叫んだ。
「バッテリー、バッテリーがあっ。充電器、充電器貸して!」
華は主導権を渡さなかった。ずっと華のターンだった。
***
(はあ、疲れた)
翔太は、台所でコップに麦茶を注ぎながら、ボーと居間を見渡した。時計が目に入る。
(もう、四時じゃん)
まるで、ジェットコースターに乗りっぱなしの疲労度だった。水分を補給した事で、翔太は少し頭が冴えてきた。
(俺は、一体何をやってたんだ。あいつ本当に、何なんだよっ)
せめてダウンロードが終わったら、華を家に帰すべきだった。華は何も考えてない様だが、やっぱどう考えても、今のこの状況はおかしい。だが、そんな事を考えてももう遅い。せめて今すぐ帰らせよう。
翔太はそう決心して、二階の自室前まで戻り、意を決してドアを開けた。華はゲーム機を掴んだまま、スースーと寝息を立てていた。
その瞬間、何かが翔太の中で、ブチッと切れた。
華の部屋着のショートパンツから、白い剥き出しの脚が伸びている。少し空いた胸元から、柔らかそうな胸の谷間が覗いていた。
もう、幼いあの頃とは全然違っていた。
翔太は寝ている華の前に歩み寄ると、そのままベッドの梁に膝を掛け、華に覆いかぶさった。
しなやかな首筋が目に入り、華の寝息を間近で感じる――
(こんな格好で、夜中に男の部屋に来て、ベッドに寝転がって、何もされないと思うなよ)
翔太は、窮屈そうに枕に押し付けられていた、華の眼鏡をそっと外した。成長はしたが、それは明らかに、自分の知っている幼馴染の顔だった。
そっと自分の唇を、華の唇に近づける――
「……しょうちゃん……」
翔太はその声に驚いて、思わず身を引いた。華が起きたのかと思ったが、そうじゃない。寝言だ。
昔はそう呼ばれていた。いつの間にか名字で呼ばれる様になって、関係も疎遠になった。正直ホッとしていた。このまま、疎遠のままで良かったのに。
翔太は華のその寝言に、何故だか胸を締め付けられた。
つづく