冬が終わっても春が来ても 君は、
「ねぇ、フユくん」

二本目、三本目って線香花火に火をつけて、
両手に持って、ゆらゆらと揺らす。

フユくんも真似して二本の線香花火を揺らして見せた。

「んー?」

「ナツミと二人でデートすることになったらさ」

「うん」

「やっぱ恋人みたいなこと、したいの?」

「恋人みたいなことって?」

「キス、とか」

「…ハルちゃん?」

「あはは。やっぱ考えるよね。男の子だもんね」

「…うん、男だからね」

「してみる?」

「え?」

「キスの練習、しよっか?」

フユくんの線香花火から火玉は落ちなくて、パチパチって散らしてた火花が消えて、
赤かった火玉が黒くなった。

「ハルちゃん、ほんとに言ってるの?」

「ダサいって思われたくないでしょ?キスで動揺してたらナツミにガッカリされちゃうかもよ」

私はずるい。

もうこの恋が手に入らないのなら、せめてフユくんの中にひとつだけでも私の居場所を残したかったんだ。

ただ一緒に過ごした時間とか、
幼馴染とか、腐れ縁とかそんなんじゃなくて、
女の子としての居場所を、私だってフユくんの中に残したかった。
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