冬が終わっても春が来ても 君は、
「ハルちゃんをそんな風には扱えないよ」

「そんな風にって?」

「ハルちゃんを誰かの代わりにとか…」

「代わりにじゃないよ。今、私とキスをするのは本当だよ?練習ってだけで、私を誰かだと思ってって言ってるんじゃないよ。ちゃんと、今だけは…私を見て」

「ハルちゃん」

フユくんが私の右手首らへんを掴んだ。
大きい手の平。
湿っぽい夜のせいで、肌の温度がすごく高く感じた。

「キス、しちゃったね」

「あのね、フユくん」

「なぁに」

「教えといてあげる」

「ん?」

「好きでもない子とキスする男の子は嫌われるからね?」

私はいじわるだ。

フユくんが私に向ける信頼を逆手にとって誘導したくせに。
そうやってフユくんの中に今度は傷を残そうとしている。

私を忘れられない傷を。

「あ…」

あ、って失敗したみたいに言わないでよ。

「女の子にとってキスは特別なものだからね?」

「ごめん…」

どっちのごめん?
私の特別を奪ったこと?
私のこと、好きじゃないってこと?

「まぁいいや。練習になった?」

「………うん」

「じゃあナツミとする時は君が初めてだよって顔して、でも男らしく、するんだよ?」

「………ん」

やっぱり忘れてね。

私とのキスは。
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