冬が終わっても春が来ても 君は、
「あれ、ハルちゃん?」

お小遣い稼ぎを口実に、俺はコンビニのバイトの面接を受けた。

バイト初日。
大学生の先輩がバックヤード兼、休憩室に案内してくれた。

そこで制服を受け取って、簡単に流れを説明してくれるらしい。

「君と同期になる女の子が先に来てるよ」って先輩が言った。
それがハルちゃんだってことを、実は知ってたんだ。

「あれ、ハルちゃん?」なんて偶然を装って言ったけれど、
ハルちゃんがここの面接を受けるって教えてくれたのは、
俺と同じ高校に通うことになった、ハルちゃんの親友の女の子だった。

高校に入学してからも二人は仲がよくて、頻繁にメッセージも送りあってるらしい。

だからバイトの面接を受けることになったって聞いて、俺もすぐに応募の電話をした。

ストーカーみたいで自分でもちょっと引いたけど、
こうでもしなきゃもうハルちゃんと一緒に過ごせるチャンスは無いかもしれない。

大学は同じところに通えるかもなんて、俺はそんなに気長でもない。
だって悠長にしている間にハルちゃんが誰かのものになっちゃうかもしれないし。

「この後、君と同い年の女の子も面接なんだ」

面接の日、店長さんが言った。
気がはやりすぎた俺は、どうやらハルちゃんより先に面接を受けてしまったらしい。

休憩室で再会したハルちゃんは「フユくん!?」って驚いた顔をした。

俺の名前を呼ぶ、やわらかい声。
春の陽気のような笑顔。

これは俺とハルちゃんの、運命の恋物語。

いや、今度こそ俺の初恋を取り戻す物語だ。
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