冬が終わっても春が来ても 君は、
「俺さぁ、やっぱ諦めたほうがいいのかな?」

「なんで?」

「だって俺のことちょっとでもいいなって思ってくれてるならその…女の子だって二人で行きたいって思うんじゃないかな」

「照れてるんじゃない?」

違う違う違う。

脈なんか無いよ。
気持ち悪がられてるんだよとでも言ってくれないかな。

擁護なんてしなくていいんだよ。
なんでそんなに平気そうに、俺を応援するんだよ。

「照れてる?」

「だって初デートが海ってさすがに雰囲気ありすぎっていうか。露出だってするし」

「うわ!」

ハルちゃんの言葉を聞いて、俺は勢いよく立ち上がってしまった。
パイプ椅子がガタッと音を立てて、びっくりしたハルちゃんが俺を見上げている。

ヤバイ…。
友達の実体験をちょっと拝借してネタにさせてもらっただけだけど、
ハルちゃんはきっと俺のことを、関係性や肌の露出のことも気にしないデリカシーの無い男だって思ったに違いない。

あーあ…。やっちゃったよ俺…。

違うんだよ、ハルちゃん。

俺は公園でも図書館でもこの休憩室だって、ハルちゃんとこうやって向かい合って話ができるならどこだって幸せなんだよ。

教室でハルちゃんのそばで過ごした九年間があんなに恵まれたものだったんだって、
知らなかった俺は大バカ者だ。

存在すらしていないナツミの話が、もう意味のないことなんだってことくらいとっくに気づいてるし、
何が「とびきり可愛い笑顔」だよ。

妄想で好きな子を嫉妬させようとか、キモすぎるだろ、俺。

あーあ。
ぜんぶ嘘だよって言って謝ろう。

ハルちゃんの気を引きたかっただけなんだって。
情けなくて気持ち悪くてごめんってちゃんと謝ろう。

本当に大好きなのはハルちゃんだけだよって、今度こそちゃんと伝えよう。

この夏休み中に。絶対に。
< 18 / 25 >

この作品をシェア

pagetop