冬が終わっても春が来ても 君は、
けれど今年の春からついに、
私達は別々の高校へと進学した。

九年間、ずっと一番近くにいた好きな人がぽっかりと抜けた穴は、私にとってはすごく大きい物だった。

「あれ、ハルちゃん?」

それはお小遣いの為に、高校入学とほぼ同時に始めたコンビニのバイト初日のこと。

バックヤード兼、休憩室で制服を受け取って、
簡単な説明を受けている時だった。

先輩に連れられて入ってきたのがフユくんだった。

同じ日から、同い年の男の子も働くんだよって、面接の時に店長が言っていた。

それがフユくんのことだったなんて!

やっぱり私とフユくんは一緒に居るべき二人なんだって本気で思った。

これは私とフユくんの運命の恋物語。

に、なるはずだった物語。

たった一瞬で、
フユくんは九年間積み上げた物なんて簡単にぶち壊して、
高校で出会った「ナツミ」にあっさりと一目惚れをした。

それから私はバイトのたびに、
フユくんの良き理解者であり、親友であり、(別に経験豊富でもないのに)恋のアドバイザーなんてものをしているわけだ。

あっという間に春は過ぎ去って、
うだるような暑さの夏がやってきた。

セミの声はもちろんうるさい。


もっと鳴けばいい。
もっともっともっと…!

ナツミの話をするフユくんの声なんてかき消してよ。
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