冬が終わっても春が来ても 君は、
「本当は二人で行きたいんだよって言ったの?」

「言ってない」

フユくんはパイプ椅子に座り直して項垂れた。

「とびっきり可愛い笑顔で言われたら、そうだねって言うしかないじゃん…。みんなと行ったら楽しいよねって」

「ふーん」

とびっきり可愛い笑顔でフユくんを惑わす女、ナツミ。

私なら海でも地獄でも、
フユくんと一緒ならどこでも喜んで行くのに。

「フユくん」

「ん?」

「終わりそうだよ。休憩時間」

私は立ち上がって、食べていたサンドイッチの包みをゴミ箱に捨てた。

私は今のままでもぜんぜん平気。

高校が離れた時点で、もうあんまり会えないのかもって思ってた。

でもこうやって夏休みもバイトで会えるなんて奇跡なんだから。

それだけでじゅうぶんだよ。
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