皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「え…」
「主演の話は最近決まったんだ。オーディション受けててさ。その映画の監督もプロデューサーも凄い敏腕の人達でさ。
キャスティングも脇役でさえベテランから大物までいて、絶対コケないどころか、興行収入国内最大とか言われるくらいの化け物クラスの大仕事。」
「………。」
「俺、本当に本当に成功したくてさ、勉強とか補習とか…出来る時間全然無くて。正直双方考えた時に、どっちが大事かって言ったらやっぱり当たり前に仕事なんだよね。」
「………。」
「今日学校と相談してきた。きっと…多分…進級は難しいと思う…。」
寂しそうに笑う黒川君だけど、でもその瞳の奥には楽しみで仕方ない感情が見え隠れしているのがわかる。
でも…でも私は?
「…学校、もう来ないの?」
「…どうかな。」
私の周りにまた小さな虫が寄ってきて、無意識に手で追い払う。
とてつもなく凄いことなのはわかるし、応援もしたい。だけど、寂しいのも事実だよ。
「どんな内容の映画?」
溢れだす色々な感情が多すぎて、一つ一つの感情を抑えるにはキリがない。聞いた質問のレベルは私にとって低いものだけど、それが一番無難で聞いてみる。
「なんか異世界ものってゆうのかな?小説とかバカ売れしてさ。元々原作のファンだったから、オーディション受けただけでも最高にテンション上がったんだけど、まさか主役とかね。俺、凄くね?」
「台詞とか…もうわかる?」