皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「後世も今世も、そして来世も貴方の全てを愛しむものなり。」
ベンチに座っている私にひざまつき、黒川君は自分の胸に右手をあてて、もう一つの手は私に向け、古い世界で身分の高い皇太子のような台詞と振る舞いをする黒川君。
「よきにはからえ。」
「おい、そこはキャーって顔を赤くなる所だろうが。」
「いや、何か古い言葉っぽいもので返した方がいいのかなって。」
「本当にお前は…。台詞の意味わかってんのかよ。」
ひざまついていた黒川君が、ハハッと立ち上がって
「そろそろ行くわ、秀紀さんに内緒でコッソリ出てきてるんだ。家まで送ってやれないけどいいか?」
「あ…うん。」
「サンキューなプレゼント。」
「うん、お誕生日おめでとうね。」
と、言った瞬間、急に顔が近くなったと思ったら前髪を上げられおでこに柔らかい感触がチュッと触れる。
暗闇でも電灯で少しだけ見える私の影と黒川君の影が、重なっていた。
「は?」
「今日の幸子、今までで一番可愛いけどいつもの幸子もいとおかしなり。」
「打ち首じゃー!!!」
おでこに黒川君の唇の感触の余韻が残り、先ほどの台詞と関連して古い文語をお互い使って私は恥ずかしさを誤魔化すようにおどけた。
「もう一つくらいプレゼント貰ってもいいだろ?」と、初めて見せるお腹を抱えて笑っている黒川君の笑顔。
そんな口を大きく開けて笑った顔、もっと見せたら良いのに。
「じゃあな。」
黒川君が去って、バイバイと話す私の感情は何一つ解決しないまま…。