皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

一滴

また一滴と、

天井から雨漏りの水がゆっ……くりと滴り落ちるような積み重なる感情。



彼の誕生日の当日、布団でうたた寝しているお父さんを確認して、狭いトイレの便座に座り、彼のSNSにアクセスして言っていたライブ配信をこっそり視聴すると。




仲間なのか、友達なのか。
何処かの白いモダンな部屋で、一般人と比べて可愛い人からカッコいい沢山の人に囲まれながら、楽しそうに会話をしている。

彼の後ろには積み上げられた沢山のプレゼント達に、テーブルには大きなケーキが置かれていた。

チャットというコメント欄はおめでとうの言葉がせわしなくズラリと並び、相変わらずカッコいい!この前のイベント行ったよ!ずっと追いかけます等と彼を称える褒め言葉が溢れかえっている。


それだけでも自分の小さい存在が痛感してしまうのに、


「はい、珍しいお客さん来ました~!」
「「いぇ~い!!」」


と、周りが盛り上がる中、胸の空いた服に大きな谷間を主張している、サラサラロングの可愛い女性が「お邪魔しま~す。」と黒川君の隣に座る。

コメント欄が一瞬ざわつくが、気付けば可愛いー!!綺麗ー!お似合いで悔しい!とこれもまた、彼女の容姿を誉めるコメントで埋め尽くされていく。

観ていると胸がチクチク痛んできて、だんだん彼の配信が見ているのが辛くなってくる。
と、あるコメントを、黒川君の周りにいる誰かが読み上げる。


「二人が出来てるって噂は本当ですか?だって。」
「気になる気になるー!!」
「これは瑠色君どうなんですか~?」

と、配信に映っている周りが黒川君と女性を冷やかしている。
テーブルに置かれていたグラスをマイク代わりにして、男性が質問の答えを待つ。



え、出来てるってどういうこと?
彼女居ないって…てか、私が今彼女…




「皆のご想像にお任せします。」

「「うぇ~い!!!!」」

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