皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
第五章
絶望の連鎖
新しく始まった新学期、黒川君が言った通りどんなに月日が経ってもあれから一度も出席をしていない。
我が儘を言って固定して貰っていたらしい彼の席は変わらないが、当たり前にやってくる席替えに私は隣の席だったという特権は失った。
「やっぱり瑠色もう来ないの?」
「映画以外にも、あちこち瑠色テレビ出てるじゃん?仕事忙しいの?」
「あ、新しいCM超カッコ良かったよねぇ。」
「この前のイベント、秒でチケット完売して取れなかったよ。」
休み時間、聞いてもいない彼の情報を、私の周りで勝手に話をしていくクラスメイト達。
正直もう何も聞きたくない、黒川君のことはそっちで勝手に盛り上がってればいいじゃん。私は何も知らないよ。
言われてないだけで、私の役目は戦力外通告をされたようなものだ。
私と、彼のLINEは彼のメッセージを最後に何一つ変わらないまま。
「でも加南子辛くない?瑠色を追いかけてここの学校にしたんでしょ?」
私の周りで話す加南子の名前に思わず顔を上げると、休み時間終了のチャイムが鳴る寸前に、「お~い!なんか次自習だって!」と、職員室から戻ってきた生徒が大きな声で教室に伝える。
「やったね。」
と、偶然にも席替えで隣になった加南子がチャイムが鳴ったと同時に席に座る。
「…加南子…そうなの?」
「え?何が?」
「黒川君を…追いかけてって…。」
「あぁうん、そうだよ。でも多分私だけじゃないよ?亜美もそうだし、A組にいる田中さんもそうらしいよ。」
地理の予定だった科目が、特に口うるさくない代わりの男の先生が教室に入ってくる。自習時間の筈が、あちこち私語が飛び交っている中、私達も会話を続ける。