皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「瑠色と幸子が付き合ってるって、何となく本当なのかなって思ってる。」
悪気はないよと話す、裏表のない加南子の観察力は間違えていない。
いっそのこと、加南子には本当の事を打ち明けてしまおうか。
何だかもう疲れてきたな…。そんなことを思っていると、胸ポケットに入れていたマナーモードにしている携帯が振動する。
こんな時間に誰だろ?と、確認するとママさんからLINEが入っていた。
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授業中にごめんなさい。
うちの人が市場に行く途中
車で事故を起こしてしまいました。
車の事故は単独だし、
怪我は大した事ないんだけど、
利き腕が使えないので…。
申し訳ないけどお店は暫く
休業しようと思うの。
本当にごめんなさい。
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「え?」
思わず声に出してしまう程の驚きに、加南子もどうしたの?と声をかけてくる。
「え、いや…。バイト先から…。」
「そっか、大丈夫?」
…大丈夫な訳がない。
店主の事も勿論心配だが、バイト代に学校のお弁当まで作ってくれていた。
それで何とか生活出来ていたのに、どうしたら…。
悪いことが重なるのか、ファミレスのバイト先。裏で呼び出しをしてきたチーフにまさかの発言をされてしまう。
「木村さん、やっぱり休み無しの毎日のシフトって労働基準法に引っかかるんだ。監査が入って指摘されるとこっちもマズイんだよね。
家庭事情も聞いてたし、労基に告げ口するとは思えないけど…悪いけど皆と同じシフトで1週間のうちの二日は休みを取って欲しいんだ。」
「……そんな。」
「でも週5だって物凄く大変だよ?ホラ、身体を休むと思ってさ。」
「…………。」
なんでこうなるのよ。
嫌なことがどんどん重なっていく。千円減るだけでも死活問題なのに。
正直、過去に家賃や光熱費、保険証の滞納を返すのに必死で働いてきた。それに加えて新たな学費、働いても働いても終わらない支払い。
どんどん暗くなる未来に、もう絶望すら感じてしまう。