皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
家に帰ったら一度頭を整理しよう。
いつもの狭い物置小屋で、制服から部屋着に着替えてドアを開ける。
「ただいま。」
「…………。」
「お父さん?」
いつも敷きっぱなしの布団で寝てるか、かろうじて座れるボロボロの椅子で、何年も前からある大量の雑誌を見ているお父さんの返事がない。
「お父さん?居ないの?」
1DKの間取りに姿が見えないことはあり得ない。部屋の電気はついてるし、またお酒でも買いに行ってるのかな?そろそろ食費の半分がアルコールにされているのも考えものだ。
お父さん、お酒減らしてくれないかなぁ。
そんなことを思いながらトイレに行こうとしたら、トイレの電気がついているのに気付き、お父さんトイレ?と、ノックをしても返事がない。
「お父さん?」
うちのトイレには鍵が無いため、少しだけ開いているトイレのドアをゆっくり開けると、
ランニング姿で目を瞑っているお父さんが、トイレの床で小さくうずくまっていた。
「…っ!?お父さん!!」
まさかと思って身体を触ると冷たくないが、反応がなく、何度も大きな声でお父さんを呼ぶ。
「お父さん!?お父さん!!ねぇ!」
「…ぅぅ。」
ぐったりとしているが、少しだけ声を出したお父さんの声を聞いてもまだまだ安心が出来ない。
誰か…呼ぶ?
110番…違う…119番…。
きゅ、救急車…。どうやって…。
頭が混乱して冷静な判断が出来ない自分がいる。
あ!携帯!物置小屋の制服の内ポケット!
慌てて外に出て物置小屋の錆びついた引き戸の扉を勢い良く開けて携帯を取り出し、震える手で119の文字を押す。
「はいこちら119番です。火事ですか?救急ですか?」