皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「あ…どうしようか。田中さんソーシャルワーカーさんに連絡してくれる?」
「わかりました。」
医者が看護師さんに指示を出して、とりあえず入院に必要なものを教えてもらい、今後の事を相談に乗ってくれる人を紹介され、診察室から出る。
先が見えなさすぎて、足元が重く感じてしまう。
裏口玄関から出る時、窓口から見える警備員さんに頭を下げて、車が数台しか停まっていない駐車場を歩いていくと、
「幸子!」
と、私の名前を呼んで走ってくる人影を見つけて足が止まる。
暗闇だからダボッとした白い色をした大きなパーカーが目立つ。
「黒川君…。」
よく見ると、前に乗った事がある大きな白い車も見えた。秀紀さんが運転してきたのかな。
「どうした?何があったんだよ。」
久しぶりに会えた気がした黒川君の顔を見ても、先ほどの電話とうってかわって再会出来た喜びは起きずボーッと答えられずにいた。
それどころか、この人は18歳で年上なんだっけ…白いパーカー似合うなぁと全然違うことを考えてしまう。
「幸子?大丈夫か?」
「…………あ。」
肩に手を置かれ、触れられた手の圧でようやく頭の中が現実に戻り、黒川君の心配そうな焦った表情を見てようやく自分の口が動く。
「…お、お父さんが倒れてて…。肝臓が悪いから入院するって…。きゅ、救急車で運ばれて…あの…。」
上手く言えない説明をしているとお父さんのさっきの姿を思い出し、またじんわりと涙が浮かべてしまう。
「そうか…。怖かったな。」
肩に置いてくれた右手の指先が私の頭をポンポンとバウンドさせる。
怖かった、怖かった、怖かった。
本当に怖かった。
「とりあえず今することは?」