皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「今日はとりあえず帰ってもいいみたいで、明日また必要な物とか…。なんか…今後の事を相談してくれる人と話さなきゃ…。」
「わかった。とりあえず送ってくよ。」
肩から頭、そしてその優しい冷たい右手は私の左手を掴み、手を繋いで車まで歩いていった。
初めて繋ぐ黒川君の手の温度は冷たくて…なのにとても暖かった。
本当に来てくれたんだね。
心配そうな顔を私にしてくれたね。
前と同じく後部座席に二人並び、運転手は秀紀さんかと思いきや、違う男の人が座っていた。
「…秀紀さんかと思った。」
「ハハッだよね。行くの止められたからうるせって強行突破してきたからな。」
「…大丈夫なの?」
「知らね。なんとかなるっしょ。」
さっき繋いでくれた手を再び繋いでくれる黒川君。
「幸子が泣きながら助けてっつってるのに放っておけるかよ。」
指と指を絡めてギュッと力強く握る黒川君の手の温度がさっきよりも暖かい。
「…泣いてないよ。」
「…泣いていいだろ、一人で頑張ったんなら。」
凄いね、黒川君。
これも貴方の演技なのかな。
救いのヒーローみたいで凄くカッコいいよ。
返事をしない私は代わりに少しだけ、握ってくれている手を握り返した。
「瑠色、病院出たらどっち行けばいい?」
「あ、純さんすいません。右でお願いしまーす。んで信号二つ目をまた右で。」
明らかに私の家路通りで疑問を抱く。
「…家…知ってるの?」
「……。」
さっきまで話していた黒川君が返事をせず、こちらを見ないで真っ直ぐ前を見ている。