皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

「あらあらどうしたの?学校は?」
「あの…店主…大丈夫かなと思って…。」
「全然大丈夫よ!それよりごめんなさいね。良かったら中に入って!うちの人も幸っちゃんの顔見たら喜ぶから。」


でも私、何もお見舞いのもの持ってきてないから。と、口に出そうとしたらママさんが「どうしたの?」と、足を止めている私に声をかけてくれる。


「私…何も買ってないから…。」

正直に手ぶらの状況を話すとママさんが

「何言ってるのよ。そんなの要らないから!あっても幸っちゃんに突っ返すわよ。さぁさぁとりあえず上がりなさい。」


定食屋の入り口とは違う、平屋の自宅の玄関の方に案内され、ママさんの後ろを歩く。
お店からは見えない自宅のお庭の花が綺麗に手入れをされていて、色々な花を咲かせている。

そういえばママさん、ガーデニングが好きと聞いたことがあった。


「さぁどうぞ。」
「お邪魔します。」

スリッパを足元に置いてくれて、素直に履いてからママさんがリビングのドアを開ける。


「ちょっと幸っちゃん来てくれたわよ。」

リビングに入ると、優しい色合いの木目の床に大きなソファーと大きなテレビ。
白い壁と日当たりの良さが、更に部屋が明るく見えた。

初めて入るママさんの家に綺麗で素敵だなと思うが、リビングに置かれたインテリや色のセンスはママさんらしいなと思う。

そしてリビングと繋がっている和室の畳の部屋に、お布団で横になっている店主がママさんの声に反応してゆっくり起き上がる。

「幸っちゃん?おぉ!来てくれたのか。イテッ。」

と、痛々しく右手にギブスをして、おでこと目元が痣になっているのを見て声をかける。

「店主、大丈夫?」
「大したことないのにギブス付けられて不便で仕方ないぞ。」

店主がいつも通りの笑顔で笑ってくれて、少しホッとする。

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