皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

会計で当たり前にお財布を出す黒川君に、せめて自分の分はと慌ててリュックからお財布を出そうとすると「いいから。」とレジの前からピクリとも動かない。

正直助かるのは本音なので、つい甘えてお財布はソッとリュックに戻す。

私のドリアと黒川君のサラダ、デザートが入った白いコンビニ袋を持ってくれる黒川君が、

「幸子の家に冷蔵庫ある?」
「あるけど…。あの、本当に家来るの?ボロいよ?汚いよ?」
「トイレあるなら何処でもいいよ。」
「人ん家でウ●コする気?」

アハハハっ!と黒川君が大爆笑しながら私の顔を見て、

「思ってても口に出すなよ。俺だって出すもんは出すよ。」と、当たり前の事を話すので、まぁ自然現象は仕方ないかと納得する。

ていうか、トイレ掃除しといて良かった。たまたま見つけて置いたトイレの消臭剤も、初日から大活躍だと言ったら、今度はヒィーヒィー言いながら笑ってる。



「ハァハァ。笑いすぎて顔の筋肉いてぇ。幸子は飾らないからいいよな。」
「笑いの基準が低すぎるのよ。小学生でも有るまいし。」

そんな事を言いながら、私のアパートに着いてボロいドアに鍵を差し込む。

「本当にボロいからね!?」
「わかったって。」

ドアを開けると、下駄箱もない靴を脱ぐ小さなスペースから、扉も無い6畳の部屋に畳まれたお父さんと私の布団が二つと、リサイクルショップで買ったカラーボックス。
収納の押し入れに、今日の掃除でほぼお父さんの荷物が入った為本当に何もない。

4畳半の台所にはギリギリ機能している椅子と、ボロいテーブル。色落ちしている食器棚もかなりの年季が入ってる。


「一応今日掃除機かけたから、座れる所に座って。」
「本当にテレビ無いんだな。」
「え?無いよ。言ったじゃん。」


< 134 / 168 >

この作品をシェア

pagetop