皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「な…にが?」
「さっきコンビニで、幸子が無意識にマスクの位置を直してる時に見えた。気のせいかなって思ってたけど飯食ってる時に完全に見えたから。」
「………。」
ご飯を食べるのにマスクを外したまま。痛みが随時有るわけではなかったのが余計に油断した。
言わなきゃ。何か言わなきゃ。
だけど、真っ直ぐに見てくる黒川君の目線を誤魔化せるのか…。
思わず視線を外して、目をプイッと背けてしまう。
「……ぶつけ「嘘だね。」
まだ話し終わってないのに話を被せてくる。まるでその言葉を言われるのがわかっていたかのように。
きっと正直に言わないといつまでも彼も納得しないだろう。
「お…お父さん。」
「…………。」
フーッとため息を吐かれ、畳んだ布団によりかかる黒川君。
正直に話したのに、何故か怒られるんじゃないかと思わせる空気に少しビクビクしてしまう。
「見せて、傷。」
「え?」
「見せて。」
暗いよ?と心の中で思っていたら、布団によりかかっていた黒川君が、私の目の前まで近くに寄ってきて私の頬を覗き込む。
いつの間にかさっきまでかけていた眼鏡は外していて、素顔になっている。
「痛いか?」
黒川君の指が私の頬と切れている唇の横をなぞって、ピリッと痛みが走る。
「…っ!」
「悪い。」
悪いと謝るくせに、その指は私の顔から離れてくれない。
ゆっくりと痛みの場所から遠ざかるが、その指は私の顔の輪郭をなぞる。
「黒川君…。くすぐったいよ。」
「うん。」
触れる指は、何度も何度も、痛みの場所を避けて私の頬をゆっくりとなぞる。でも時折痛みの場所に触れることもあるが、何故かもう痛くなくて、不思議な感覚。
彼の口から甘いプリンの匂い。
だけど…。