皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
気付くと息をするのを忘れていたかのような、胸の詰まる苦しさ。
突然突きつけられた終わりの話。
さっきまでいたんだよ?
黒川君も承諾済みって、じゃあさっき何で言ってくれなかったの?
私の意見は?私の気持ちは?
始まりも終わりも、私の納得がいかないことばかり。
部屋に戻って悔しいのと怒りで、思わず雑誌と封筒を床に叩きつける。
突然の用済み宣言。
明らかに私を見下していたような秀紀さんの態度。
誕生日プレゼントを渡したあの日、最初から仕組まれていた公園のやり取りの黒川君の行動。
全部全部
腹が立つ。
誕生日プレゼントを渡すのに、どれだけ頑張っていたと思ってる?
どれだけ楽しみにしてたと思う?
私の空回り、そうだね、全部全部偽物だもんね。
売れる為ならどんなことだってするって言ってたもんね、私を犠牲にしてもかな。
やり場のないこの気持ちを、空っぽのプリンの容器を持って壁にぶつける。
大っきらい!
黒川君なんて大っきらい!!
秀紀さんも大っきらい!!!
事務所の命令も意味分かんない!!
知名度!?何それどうでもいい!
全部嫌い、全部大っきらい。
でも一番大っきらいなのは、私。
特技もない、お金もない、病気のお父さんと二人きり。携帯もない、世間も知らない、黒川君と居ないと友達も出来ない。
何もない、なんにもない。
私には…なんにもないね。
【さよなら】と【ありがとう】くらい、せめて黒川君の口から聞きたかった。
畳んでいる布団に顔をつけて、「うぅぅ…。」と叫ぶ声を押し殺して私は泣くのを我慢していた涙をボロボロ溢して、布団を濡らしていった。
ねぇお父さん、今日は我慢しなくていいよね?お父さん今居ないから泣いていいよね?
泣いたら叩かれるの分かってるから…今日は居ないから…沢山泣いていいよね?
これから誰にも慰めて貰えそうにないから。
私、もう必要とされなくなったみたいだから。
だから泣くよ?いいよね。