皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
第六章

苦しいよ黒川君









泣きながら寝てしまったのは、いつ以来だろうか。

気付くと、部屋の中がうっすらと明るく、畳んでいた布団を枕にして、横になっていたのか身体が固まって少し痛い。

今はセットしていない目覚まし時計の時刻を見たら朝の4時半すぎ。


…夢では無かったんだ。
本当に現実か…。手元から無くなってしまった携帯。
どんなに探しても、もう何処にもない。


おかしいね。
今まで無いのが普通だったのにね。

グッと身体を起こして、少し破れたカーテンを開けるにはまだ早いが、白いレースを残して少しだけ開けて部屋を明るくすると。



「…なにこれ?」


畳の部屋と台所に一万円札があちこち散らばっている。
何これ!?どういうこと?

泥棒!?
いや、泥棒なら逆に持っていかれるか。
季節外れのサンタクロース!?
いや、私にサンタクロースは一度も来たことがない。


とりあえず焦りながら、散らばっている一万円をかき集めていくと、ふと昨日秀紀さんから受け取った封筒を思い出す。


「まさか…。」昨日雑誌と一緒に床に投げつけて、部屋の隅に置かれた未だに厚みがある封筒。

恐る恐る封筒の中身を見ると


見たことが無い、一万円を帯でくるんだ札束と、バラバラで入っている一万円が封筒の中から見える。

待ってこれヤバイ。
私絶対捕まると思う。
何罪なの!?お金は貰ったけど身体は売ってないのにどんな罪を着せられるの!?

もはや何枚あるか分からない。

ていうかこんなにお金を見たことがないから、こんなボロアパートに大金と自分だけというあり得ないコンビに、不安要素しかない。




返した方がいいんじゃないかと思わず携帯を探すが、


「あ…そうか。携帯無いや。」


沸騰していた頭が、急激に冷えていく。携帯が無い現実にいきなり冷静になって、お金をゆっくり数える。


200万。


冷静になった筈の頭が、目の前の大金でまたしても頭が混乱してしまう。

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