皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「…ごめん。携帯はなんか壊れて…。」
この言葉を言うのに精一杯。私上手く作り笑い出来てる?
「でも記事読んだけど、瑠色とかなり前からとか…本当に付き合ってたの?」
「学年一の美女とか…ねぇ?」
「てか瑠色、来年映画出るじゃん?何か…あの噂の女優が本命でこっちがカモフラージュじゃない?」
遠くでも聞こえてくる、記事が出ることによって生まれる妬みや、疑心暗鬼の声。
当たり前の反応、これが世間の当然の声だ。
祝福の声は、最初から聞いたことなかった。そして今はそれを痛いくらい実感する。
私の周りに集まる皆は真実が聞きたいだけだろう、そうだよね。だって、私なんかがあの芸能人の瑠色となんて…。
「ちょっといい加減止めたら?幸子困ってんじゃん。全国ニュースだよ?私達が思ってる以上に当事者ならメンタルくるって。」
ドスン!と、机にカバンを乗せる加南子が私の周りにいた皆を一喝する。
「おはよ幸子。大変だね。」
「お、おはよ…。」
加南子の迫力に、サーッとギャラリーが去っていく。
そして、加南子の顔を見てなんだか少し、安心してしまったのか。
心のネジが壊れてしまった私の涙腺がまたもや、じわりと涙が溜まっていく。
あんなに泣かないと決めたのに、昨日から私、どれだけ弱くなってしまったんだろう。
「幸子携帯どうしたの?」
「加南子も…連絡くれてた?」
「まぁ一応ね。だって寝起きの一発目から瑠色の熱愛スクープでしょ?しかも相手はアンタ。一般人なのにあんなに堂々と取り上げられるもんなんだね。」
「………。」
「どした?」
「…ごめ…何か…。」
私と同じ写真を見たであろう加南子の発言に、また思わず、あの時の時間が意図された行動と思い出して、ポタリと涙が出てしまう。