皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

「ちょ…大丈夫?」
「…駄目かも…。」


顔を手で隠し、思わず本音を溢してしまう。

そうなの、駄目なんだよ。私もう用済みなんだよ。私もう要らないんだよ。


「うぅぅぅ…。」
「ちょっと幸子出よう!このままHR出られないでしょ。ねぇ私と幸子、トイレって先生に言っといて。」

加南子が隣の席に座っているクラスメイトに伝言を頼む。

私が泣いているのはどうやら周りも気付いていて、私と黒川君との熱愛が世間に発覚して動揺したのかと皆が勝手に思っている。


加南子に肩を抱かれながら二人で教室を出ると、つい自然といつも黒川君と過ごした屋上手前の踊り場に、足が動いてしまう。


本鈴が鳴り、誰も歩いていない廊下を歩いて階段を昇る。

「へぇここ良いじゃん。あ、屋上の鍵開いてないじゃん。漫画だったら開いてるのに。」
「フフ…。」
「なに?」
「初めて黒川君と此処に来たとき、黒川君も同じこと言ってた。」


廊下を歩いていると、気付けば涙が止まって思わず前の出来事を加南子に話す。


「そっか。んでどうしたの?」
「………。」

加南子が踊り場の壁に背中をつけて、足を伸ばして座る。

「話したくないなら話さなくていいよとか言わないよ。気になるもん。」


加南子らしい慰めの口調に、壁に背中をつけて立ちながら下を向いている私の顔に笑顔が出てしまう。


「加南子はハッキリしてる性格だよね。最初は何でこんなに意地悪なんだろうって思ったけど。」
「いや…あれはごめん。瑠色の隣の席が羨ましくて…。ってそれ前も言ったじゃ~ん!」






「フフ…。加南子私ね、最初から黒川君と付き合ってないよ。」

「え?」

「黒川君に頼まれただけ。彼女役になってって。知名度上げる為にスキャンダル起こしたら世間が騒ぐから、偽物の彼女の役してたの。」


はぁ?と加南子が怒っているのか驚いているのか、大きな声を出す。




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