皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「保証人はお父さんの従兄弟に頼んだから。まぁ、これが最初で最後だぞって怒ってたけどな。」
「そうなんだ。」
「金は…悪いけどお父さんじゃ用意できないから。幸子には悪いけど。」
「…お金はあるよ。夏休み中ずっと働いたから、そこは心配しないで。」
「悪いな。」
学校帰り、ファミレスのバイトが休みの時にお父さんのお見舞いに行く。
初日より落ち着いたお父さんの姿は、身体からアルコールが抜けて必ず訪れるらしい手の震えと共に、相変わらず点滴をつけたまま私と話す。
秀紀さんに貰ったお金はお父さんには言えない。
きっと駄目な方向に使ってしまうだろう。
1日また1日と経過して、あの大金を返す方法は見つからない。
彼の居場所も連絡先も知らない。
諦めた私はこれはもう手切れ金だと思い込み、滞納していた全ての支払いをあのお金で払わせて貰った。
お陰様で借金は無くなり、まっ皿になった状態でたまたま大家から言われたアパートの解体のお知らせを朝早くに言われる。
「お父さん…知ってたんだね。」
「金もないのにあの家から出ろって、これじゃあ俺はともかく幸子が路頭に迷うから言えなかったんだ。」
あまりに引っ越す気配の無い私達に痺れを切らしたお爺さんの大家さんが、私に困ったように伝えてきた。
「お父さんには言ってたんだけどな。まぁアンタがいるから言いづらかったんだろうけど…。アパート維持する元気も無いから辞めて更地にしようと決まってな。」
あんなに何度も家賃を滞納していた私達だが、強制立ち退きをしなかった大家さん。
「アンタがいるからこっちももう少し、もう少しって思って延ばしていたんだけど…。」
申し訳ないと私に頭を下げる大家さんに、こっちこそ申し訳なくて「大丈夫です。」と、私も頭を下げる。