皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「幸っちゃん駄目よ!私は反対よ。」
「ママさん…。」
朝、いつものようにママさんの自宅でお弁当を貰った時に、今週中に引っ越すことを伝え、次のアパートはこの定食屋さんから遠い為通う事が難しいと正直に話す。
バスに乗れば解決する話だが、朝のバイト時間5時半までに着くバスは無く、送ってくれる車なんて有るわけない。
「こんなに良くして貰ったんだけど…。新しいアパートから距離が近いバイトを探そうと思って。」
「それなら!幸っちゃんのお弁当渡すだけでも。ホラ!反対方向だけど朝に変わらずここに寄ってもらったら。それか…私が学校の近くでお弁当持って待ってるから…。」
「ママさん、それは駄目だよ。」
分かってる。
そんなことまでしてもらう優しさは受け取れない。
まして、今はお店を閉めてるけどまた再開したらママさんだってそんな暇はない。
「大丈夫。ママさん今まで本当にありがとう。今度はちゃんとお金を払ってご飯食べに来るから。」
「幸っちゃんさえ良かったら…うちの子に…「ママさん!」
私の大きな声にハッとママさんが口を押さえる。
「ご、ごめんなさい。迷惑よね。幸っちゃんが心配で…。」
「違うよ、私今までお母さんとか知らなかったから、ママさんがお母さんみたいで嬉しかったし今も思ってる。」
「幸っちゃん…。」
「店主も!店主みたいな人がお父さんだったら、私もっと人生楽しかったかも!」
この場に居ない店主にも、本音を隠さず話す。
「必ず顔を出してね?私、幸っちゃんに会えないと寂しすぎる。うちの人だってそうよ?」
「ありがとうママさん。お弁当もいつもありがとう。ねぇママさん…もしね…。」
もし、瑠色が訪ねてきたら…。
言いかけて止めた。自分で期待を持たせてどうするんだ。
「何でもない!またね。」
学校に行くリュックを背負い直して、ママさんに背中を向けて学校に行く。
ありがとうママさん、店主。
本当に本当に大好きだよ。