皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
迎えに行くよ
私がお父さんと二人暮らしじゃなかったら
私がお父さんを養っていなかったら
テレビも携帯も持てる普通の女の子だったら
瑠色を応援してるファンだったら
私はママさんや店主、黒川君と出会えなかったかもしれない。
だからこれでいいんだ、これでいい。
自分の人生を恨んだこともない。この生活が当たり前で生きてきたから。
私はこれからも、ずっと…。
「何か瑠色のSNS、閉鎖したらしくてさ。最近全くテレビも出ないし、今までの動画も全部消えてるんだよね。映画の主演大丈夫なのかな?」
「へぇ…。」
「やっぱり幸子とのスキャンダルがまずかったんじゃないかなぁ?だって本当に凄い人気だったんだよ。確かにあの時から知名度は更に増えたと思うけど。」
私と黒川君の騒ぎが落ち着いたらしく、暫くしてから加南子が教えてくれた黒川君の情報。
どんな情報を聞いても知っても、私にはどうすることも出来ないことだけど。
加南子以外、世間はスキャンダルのせいで黒川君が自粛したと思っているのか、姿を表さない彼にネットでは好き放題言われているらしい。
何か発信してくれたらいいのにと、元々ファンである加南子が言われ放題の彼への中傷に携帯を見ながら怒っていた。
加南子のその姿を見て、フフっと笑う。
それから月日がどんどん流れて季節も移り変わり、新しいアパートにも慣れてきた頃に退院したお父さんは、今のところ身体の調子は良さそうだが、アルコールを我慢してる生活に苛立ちが募っている。
「あぁクソ!何で飲めないんだよ!」
水をガブガブ飲みながらリハビリ時間が迫っている。
治療として取り入れられたアルコール依存性の専門のリハビリ病院を紹介された。
一筋縄ではいかないと覚悟を決めているが、苛立ちのせいでたまに出てしまう暴言や私への暴力はどうしても変わらない。
だけど、お父さんが変わろうとしているのは確かなんだ。
不安だった私の私物を捨ててしまう酔っ払いの悪行を回避しているのも、先ずはひと安心している。
「頑張れお父さん。」
「チッ分かってるわ!」
頑張れ…お父さん。