皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「えーと…。けっこう前から予告なく、僕のSNSが閉鎖になったり、このチャンネルの動画を全て消したり、その説明もなく皆さんもモヤモヤしたと思います。
これは僕と事務所の中でトラブルがあり、こういう結果になってしまいました。
僕としては…【瑠色】として…この世界に入って今まで歯をくいしばってやってきました。
有難いことにファンも沢山増えて、人によっては成功した人生を歩んでいたと思います。
だけど…僕としてはもっともっと高みを目指したかった。
正直…どんな手を使ってでものしあがりたかった。
僕の浅はかな感情でした。
僕の浅はかさで…
一人の女の子を傷つけてしまいました。」
加南子が口を開けて、私の顔を見て肩をバシッと叩く。
私は言葉が出ず、黒川君の話す姿を無言で見続ける。
「その女の子は…前に僕がスキャンダルを出した女の子で、きっとその子は誤解をしたまま…」
黒川君が、一瞬下を向いてまた直ぐにカメラの方を向く。
「僕が悪かったんです。僕が…。ある頼み事を僕は女の子にしました。その子は…嫌々ながらも引き受けてくれたんです。
僕は正直その頃は天狗になっていたんだと思う。
保証もないのに上手くいくと過信していた。その子より自分の方が大事だったんです。…最低な考えでした。」
口を押さえている手が震えてくる。
加南子も、どんどん涙目になっていってる。
「その子が辛い日々を送ってると知ったあの日から、僕が君の楽しいと思う一つになりたかった。
それはちょっとの気持ちからどんどん大きくなっていって、
君を苦しむ全てのモノを、僕が取り除いてやりたいと思いました。
だけど、それは僕の我が儘であり、こんな僕でも大きな仕事があり夢もあった。
それなのに僕の葛藤はさほど無かった。その子を優先するか、仕事を優先するかの選択肢は僕にとってはもう一択でした。
だけどその僕の葛藤の無さが、余計事務所との大きな亀裂が生じました。
僕の中で変わってしまった優先順位は認められず、瑠色としての価値を下げたくない事務所の考えにまだ僕は従うしかなかった。
あの時の約束が突然終わったのは、僕も知らないことだった。きっと違う風に伝えられてると思うけど…。」