皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
【はい】か【いいえ】
迎えに行くよ
黒川君が言っていた。
一度しか観ていない真面目な顔をした黒川君の姿を、何度も何度も思い出す。
洗剤のついたスポンジが荒れた手にしみて、これはやっぱり夢じゃないと実感出来る。
嬉しくて涙が出るのも恋なんだね。
切なくて、あんな苦しい想いをするなら二度としたくないと思っていたのに。
彼の言葉にこんなに心が救われて、こんなにも満たされるから…だから皆、好きな人が出来ても頑張れるんだね。
加南子が次の日、まだ興奮冷めやらぬ状態であの動画は桁違いの再生数だと言っていた。
テレビやネットニュースもあんなストレートな瑠色の告白に、逆に好感度が爆上がりしているらしい。
「瑠色の動画観たよ!」
「ほんっとに胸キュンした。」
「もうカッコ良すぎて逆に応援したくなったんだけど!」
相変わらず黒川君の行動にいちいち反応するクラスメイト達が可笑しくて仕方ないが、
「「んで、いつ瑠色と会うの?」」
と、私が一番聞きたい質問をされても答えようがない。
と、思っていたら予鈴のチャイムが鳴り、皆は黒川君の話題をしながら席につく。
担任がそろそろ来ると思った瞬間、教室の後ろ引き戸がガラッと音を立てると、
キャーーーーーー!!
っと、久しぶりに聞く女子達の黄色い声に、窓際の席の私も加南子も、なんだ!?と、声を向けてる方に顔を振り向く。
と、その瞬間に加南子も
キャーーーーーー!!と、隣の席で私の鼓膜まで響くほどの甲高い叫び声を上げる。
叫び声と共に皆が立ち上がるものだから、席に座っている私は余計に何が何だかわからず、そして皆の背中しか見えない!!
何々!?何がどうしたの!?
「幸子っ!!!」
突然大きな声で私の名前を呼ばれる。
聞きたくて、会いたくて堪らなかったあの人の…
好きな人の…声。