皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

「ちょっと!!」
「いいじゃん、あの動画の結果が気になる奴ら何千万いると思ってんだよ。」
「何千万!?」


カシャッカシャッと周りが黒川君に抱っこされている私の姿を、どんどん撮っていく。

思わず顔を伏せて黒川君の肩で顔を隠す。


「幸子諦めろ?イケメンの彼女の試練だ。」
「イケメンの彼女じゃなくて、瑠色の彼女の試練でしょうよ。」
「それを乗り越えてこそ、本物の愛と呼ぼう。」
「こんな時に、台詞ぶっこいてんじゃないわよ!?」
「バレた?」


ハハッと笑う黒川君の笑顔と、携帯を向けてるクラスメイト。
いつの間にか来ていた頭の薄い担任が「そろそろいいか~?」と、教壇で待っている。

「え!?ちょ、大丈夫なの!?むしろちゃっかり制服着てるけど侵入者じゃないの?」

ソッと降ろされた身体で、黒川君の存在を心配する。
だってどう考えても、もう退学してるでしょ!?

「ちゃんとこのクラスの一員よ。」
「え?」
「加南子サンキューな。黙っててくれて。」


え?え?と、黒川君と加南子の顔を交互に見る。


「授業はこのクラスでは受けてないけど、ちゃんと休学届出して違う部屋で追試も受けてるんだ。ちゃんと合格点取ってる。」
「…え?」
「たまたま追試を受けてる時に加南子に見られたんだけど、内緒にしてくれって言っといたんだ。」


加南子が赤い顔をしながら
「だって…瑠色が内緒にしてって言うなら私誰にも言わないわよ。」

「幸子の次に良い女だな。ありがとうな。」


黒川君があの破壊力抜群のウィンクをして、加南子は腰が抜けるほど力なく席に座った。

皆もそれぞれ席につき、黒川君もいつもの固定された席に座ってかなり遅れたHRを久しぶりに受けている。



加南子が携帯でいつの間に打っていたメールの文章を、私に無言で見せる。




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