皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
そして次に店から出てきたのは眼鏡姿の秀紀さん。私の顔を見て申し訳なさそうに口を開く。
「まだキチンと謝罪してなかったね。あの時は苦しい思いをさせて本当に申し訳なかった。」
「いえ…あのお金…事務所からではなく秀紀さんからのお金と瑠色から聞いて驚きました。」
「…まぁ。幸子ちゃんに対してあんなことしか罪滅ぼしが出来なかったからね。
僕も彼と同様、浅はかな感情で今の事務所を守ることしか考えていなかったから。
彼がドタキャンする度に支払う莫大な損害賠償額に、僕の監督不行届だって社長にどやされるし、事務所を守ってきた人間達の生活も守らなきゃいけなかったから…まだ十代の幸子ちゃんに随分と責めた態度を取ったと思う。
後は…やっぱり彼が成功する姿を見たかったのが一番の本音だったんだ。
彼の夢でもある海外進出は、僕の夢でもあったから。」
「…ごめんなさい。」
「いやいや、謝るのは僕の方だから!大丈夫。だから僕が会社を辞めて、新しく事務所を作ってまた一から瑠色とやっていこうと決めたから。今度は皆が幸せになれる会社にするさ。」
眼鏡をかけ直して、ニコっと笑う秀紀さんを見ていたら
「「「幸子に近づくんじゃねぇ!!」」」
と、またしても男三人組がこちらを見て怒鳴っている。
ママさんじゃないけど、私まで似た三人を見て呆れてしまう。
と、用意が出来た私服の黒川君が怒りながら私と秀紀さんの間に入り、
「駄目だぞ?秀紀さん、こう見えて子持ちだからな?」
「おいおい…極秘だぞそれ。」
「あ!結局内縁関係から籍を入れたと聞きました。おめでとうございます。」
「俺も幸子も結婚出来る年齢だしなぁ。子供沢山作って子供の顔モザイクかけて動画バンバン出そうぜ。」
「嫌だよ。馬鹿なの?」
「ホラ!あんた達遅刻するわよ!!」
ママさんがホウキとちり取りを持ちながら、私達に声をかける。
「あ!本当だ!行くね!」
「幸子っ!」