皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
階段に座るとスカートから見える太ももの紫と黄色の痣を手で隠す。
入学式前日にお父さんに蹴られたものだ。
お姉さんのお下がりの制服のスカートは私の同級生、もしくわ上級生より短いだろう。
それでも制服を買うお金なんて無くて、皆がふくらはぎを出している生足とは反対に膝下まで隠すように私はハイソックスを履いている。
そんなキラキラした黒川君の人生を話されても、そうなんですねとしか答えようがないし、世界が違い過ぎて想像もつかない。
「んで、本題なんだけど。」
まだ話しが続くことにドッと疲れが肩にのし掛かる。
「俺ね?事務所の命令で少しスキャンダルじゃないけど、彼女がいて高嶺の花も実は普通の男か!?的な話題を世間に出す作戦を命じられてるんだよね。
ちょっと違うけど例えて言うならば売名行為ね。」
「……?」
「スキャンダルの相手がモデルとか女優とかだと世間は冷めるわけ。結局高嶺の花の相手は高嶺じゃ困るのよ。とにかく一般人、まして同級生っていうのがポイント高い。」
「…はぁ。」
「あんたは全く俺を知らない、むしろ惚れるともならない。これ以上無いくらい適任だなって。ついでに友達いる?」
「…居ないけど。」
「もう最高かよ~!周りにバレない可能性しかないじゃん!携帯も無いならSNSで匂わせな行為もないし、完璧過ぎてあんた以外居ないんだよ!」
なんかトイレ行きたいなぁと話題に興味なくぼんやり階段の数を数えてみる。