皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
もう私のフルネームやバイト先はこの際どうでも良い。
---お父さん--
お父さんの事を知られたくない。
何年も働かず、アルコールに溺れ、児童虐待と近所の通報は数知れず。
離そうとした行政、離れたくなかった私。変わらないお父さん、同情される目と諦められた周囲の反応。
お父さんの為に働く私は間違えていないと信じているが、
馬鹿になんてされたら悔しいけど恥ずかしく感じてしまう。
家庭の事は何もかも知られたくない、私の名前なんて安いもの。
「…ど、何処まで調べてる?」
「は?何が?」
「だって…さっき。」
緊張して声が上ずってしまう。
「あぁ!あれ?ジョークだよ。名前なんて同じクラスだし何日間かクラスと名前張り出してたじゃん。それで名前知ったんだよ。
さっきのご飯屋も、秀紀さん達と歩いてたら幸子があの店に入ってくのたまたま見えたから、幸子の家かバイト先かなって。」
「は、はは。な、なんだ。」
「ね?俺の演技も大したもんでしょ?」
朝の少し冷たい風と晴天の下、チラホラ学校に向かう色々な学生達がこちらを見ているのがわかる。
教えてくれた身長は忘れてしまったけど見上げないと見えない、校則違反の染めた髪が風にサラッとなびいて、首もとに見えた小さなホクロ。
そして何度見ても相変わらずのイケメンに、
私をからかった彼は、朝の太陽の光で目を細めてしまいそうな眩しい顔で笑っていた。
「騙されたわ。」
「なにが?何か悪い事してんの?」
してないわ!と彼の背中を力一杯拳で叩いて、笑いながら隠す私の動揺。
「いてーって。」
彼はきっと…
気付いていただろうけど。