皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
黒川君の席の周りに集まってくるクラスメイト達。バーゲン並みのぎゅうぎゅう詰めに、隣の席の私を邪魔だと言わんばかりに誰かの足がわざとなのな偶然なのか、私の机を蹴っ飛ばす始末。
リュックに入っているママさんから渡されたお弁当がひっくり返ったら嫌なので、仕方なく机の横にかけていたリュックを膝の上に乗せて死守する。
隣にいる筈の黒川君の姿は皆の背中で全く見えない。だけど、皆の問いかけに返事をしていないのはわかる。
段々と予鈴が近くなり、教室に入ってくるクラスメイトが増える中、黒川君がいると気付いた皆の顔が同じ反応なのが面白い。
私を睨みながら教室に入るのが日課だったA子も、睨んだと同時に黒川君の姿を見つけて作り笑いに秒で変化した表情に感心した。
予鈴が鳴り、ようやく息苦しい人混みが散らばり彼の姿を横目で確認する。
久しぶりに隣の席に座っている黒川君の存在が、私を含めたクラスメイト全員が久しぶりの空気感というかむしろ違和感に近いだろう。
一人、この男がいるだけでこんなにも教室内の雰囲気が変わる事に改めて黒川君の存在て凄いんだなと実感する。
「あのさ。」
担任が来る前に彼の大きな声が教室内に響き渡る。