皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
第三章
当然の芽吹き
「買えよ!携帯。」
「無理。要らない。」
昼休み、誰にも聞かれないように初めて二人で話した屋上手前の階段の踊り場で、店主が作ってくれたお弁当を食べる。
黒川君は相変わらず学校に連日来ることはほぼ少ないが、教室で話す内容ではない会話に自然と日課になった昼休みでのルーティン。
「俺が学校居ない時、またお前に何かあっても助けてやれねーぞ?」
「もう無いでしょ、アレが効いてるっぽいし。」
彼が堂々と皆の前で私を苛めた奴は覚悟しとけと、ドラマのように高らかと言ったもんだから私はあれ以来平和に過ごしている。
黒川君がそれとこれは別だと持論を話すので鬱陶しい。
「不便過ぎるんだって。お前が何時にバイト終わるのか、今日は何処のバイトなのか。」
「いや、バイト先に現れても困る。」
「お前が某引っ越し屋でプルプルしながら冷蔵庫運んでるの見た時は流石に秀紀さんと笑ったなぁ。」
「あ、あれは土日だけだけど日払いなの!めっちゃ頑張れるんだよね。」
土日限定の引っ越し屋さんのバイトは女性でも容赦なく運ばされる家電製品。土日だけの労働なのでマッチョになる程筋肉はつかない。
人がこんなに真剣に働いている所に現れたいつもの二人。
「だってママさんが教えてくれたんだぞ?」
「最近潤ってるからって財布も口もゆるゆるになってるからなぁ。」