皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

「俺はこっちが好きかな。」


向けられた答えは、左。
どうやら私は黒川君に背中を向けて足の間に座るらしい。
私にしたら近すぎるこの距離は、あの整った顔を間近で見るのは、お腹一杯の私にとって胸が一杯というより、胸焼けしそうだったのでまだ有難い。


足と足の間に立っていた私はくるりと背中を向けて、座れと指示を出されたので正座をする。

なんだこれは…。
見えない筈なのに、背中からよくわからない圧を感じる。



「足崩したら?痛くないの?」


背中で感じる彼の至近距離の声が、何故だか頭がゾクゾクする。
とりあえずさっきまで正座をしていたから、既に足が少し痺れているのは本当なので体育座りをしてみる。


私前から見たらパンツ丸見えだなぁ…。
良かった、向かい合った距離で体育座りしてって言われたら、口どころか手も出してしまいそうだ。



フワッ






肩にのしかかる優しい重み。
彼と私の距離が更に近くなり、私の背中は彼の胸に当たっている。
あの良い匂いが今までで一番に香る、というよりあの匂いが私の全体を包まれている感覚。

目の前には二本の腕が交差して、後頭部に黒川君の顔が寄りかかっている。




「な…な…何を…。」

どうすれば良いのかわからない私の両腕は、ガッシリと両膝を掴んで固まっているが、私の腕を重ねるように黒川君の腕が羽のように軽く置いてある。



「初めて見た幸子のその反応、緊張してる?」




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