皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

存在意義


「買っちゃったー!!」
「えっマジ!?いいなぁ。」


「お待たせしました、チョコレートパフェでございます。」


別の学校の女子高生達が、注文して持ってきたデザートに目もくれず、テーブルの上に広げられた黒川君の写真集。


「もう瑠色の為なら全財産注ぐ。」
「私もママにお小遣い貰って買うかな~。」
「この前のイベント、瑠色超カッコ良かったよねぇ」
「D子、せっかくチケット買ったのに泣きすぎて覚えてないって言ってた。」
「E子のお姉さんもイベント巡りの全国行脚しちゃうって。良いなぁお金稼げる人は。」


彼の話題を聞きながら、一瞬だけ見えた広げられたページ、鍛え上げられた上半身裸の彼がまるで誘っているかのような色気のある表情がこちらに向けている。

この身体ね、努力してるんだよ。

彼が言ってた。そんなこと、見ず知らずの彼女達には言わないけど。



「でも何か一瞬瑠色に彼女いる説って画像付きで情報回ってたけど、気付けばその画像もう見れなくてさ。」
「あ、私も見たことある。なんか冴えない顔した女でしょ?」


背中で聞こえた自分に当てはまるような話題に、一瞬足が止まるが


「「ま、あり得ないでしょ。」」


と、勝手に解決してくれた声に安堵して次の仕事の作業を行う。



冴えない…ね。
確かに冴えないどころか、下の下の容姿に生活環境。

自分で切っているガタガタの前髪、半年に1回行く1000円カット、ショートヘアから自然に伸びる肩までの髪の長さ。
周りを見て慌てて整えたけど、合っているのか合っていないのかわからない薄くなった眉毛。

お化粧は…
したことがない。する工程もわからない。

100円ショップで沢山並んだお化粧品に、憧れはするもののやり方がわからず見ているだけ。

どの女の子を見ても、むしろ小学生でも綺麗に整えている顔や髪型を見て、自分はなんてみすぼらしいのかとたまに襲う劣等感。
< 55 / 168 >

この作品をシェア

pagetop