皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
涙を流さない理由
モザイクがかかっているかのような背景で
昔のあの時の場面
『娘様は…施設に入れた方が将来を考えましてもその方が望ましいかと…。』
『そうですね。俺には…もう育てることは…』
『嫌だ!!お父さんと離れたくない!』
『幸子ちゃん…会えなくなるわけじゃないのよ?お父さんもちゃんと会いに…』
『嫌だ!!絶対嫌だ!!!』
『幸子…俺…。』
『お父さんと離れない!!』
消えない記憶…。
忘れられないあの時の会話。
『お前も俺を馬鹿にするのかよ!!』
『お父さん止めて!!痛い!』
『あん時やっぱり施設に入れとけば良かったんだ!そしたらこんな…』
『ごめんなさい…ごめんなさい。』
『泣くな!鬱陶しいんだよ!!』
『うぅ…ぅぅ…。』
『泣くな!!!!』
泣かないから
お願い私を捨てないで
もう絶対泣かないから
『娘様がこれ以上の収入を得ると、私ども心苦しいのですが…』
『大丈夫です。私が全てやります。』
『幸子、世間は思った以上に甘くない。くだらない人生を歩むな。俺みたいな負け犬の道を歩むな。高校だけは卒業しとけ。』
『わかった。』
泣かない
高校だけは卒業する
負けない、私は負けない。
『俺の彼女になって?』
写真のフィルムのように暗い記憶が並べられた中に、
キラキラ輝く貴方の存在から言われた偽りの言葉でも
きっと私はこの言葉を胸に秘めて生きていくのかもしれない。
私はきっと、ずっとお父さんといるから。
あの時そんなことを言われたなと、誰にも言えないまま。