皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「おい、大丈夫か?俺なんか購買見てくるからさ。」
私の返事を聞かず、黒川君が保健室から出て行く。
保健室の先生が、窓際に置いてある机に移動して私に話しかける。
「木村さん、今、先生しか居ないから聞かせてもらうけど生理かな?」
「…はい。昨日から。」
「そっか。ダイエット…ではない?」
「…はい。」
「身体の鉄分が不足しちゃったかな。あまり無理しないで、しっかり食べて休みなさい。お腹は痛くない?」
「…むしろ減りすぎて辛いです。」
「…!アハハっそっかそっか、黒川君が何か買って来るのを待ちましょ。」
先生がパソコンを開き、カタカタとキーボードを打ち込んでいく音を聞きながら、上半身を起こしていた身体を、もう一度ゆっくりとベッドで横になる。
ふと気付くと枕元に白い色をした見知らぬ携帯が音を立てている。
「先生?誰かの携帯鳴ってますけど。」
「え?それ貴方のって言ってたけど。」
「…私の?」
初めて触る携帯が、意外と重くてそして表示されている【瑠色】と書かれた画面。
「先生、これどうやって出るの?」
「えぇ?緑の電話のマークボタンをスライドさせるのよ?」
スライド?
どうやって?
ボタンを触るだけでは変わらない画面に焦り、何回か試行錯誤して触ると切り替わる表示画面。
『お?出た。なぁ~パンとおにぎりどっち派?飲み物は?嫌いなもんは?』
耳から初めて聞こえてくる電話からの声。
いつも直接聞いていた声と、なんだか少し違って聞こえてくる不思議な感覚。
『てか時間も時間だから大したもんねーわ。とりあえず何でもいいか?』
『あ……ありがとう。』
『おう。今行く。』