皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「俺、教室からリュック持ってくるから玄関行ってて。」
「え、あ。」
あれ?
私一緒に行くって言ってなくない?
「木村さんも黒川君もキチンと早退届け出すのよ。」
「先生やっといて~。今度俺の未発売のグッズこっそり渡すから。」
仕方ないなぁと言いつつ何処か嬉しそうな先生の顔を横目に、パンの入ったビニール袋をぶら下げ、ありがとうございましたと保健室を出ていく。
玄関で自分の靴を履きながら、本当にいいのかなと、若干不安な自分とこれから何処に行くんだろうと期待している自分がいて、
「おい、持ってきたぞ。」
「あ、ありがとう。」
渡されたリュックを背中にかけ、玄関を出た黒川君の少し後ろを歩いて後をついていき、
正面玄関から校門までの通路は、校舎の窓から丸見えで、教室の窓からこちらを見てビックリする顔があちこち見えている。
嘘みたいに止まった嫌がらせだが、
私達の関係に祝福している者は誰一人居ない。
まして、黒川君にもういいよと言われたら…
私はまた…あの嫌な環境に戻らなきゃいけなくなるのかな。
さっき食べたコロッケパンが逆流してきそうになり、また少し、顔色が悪くなる。
やっぱり簡単に安請け合いするもんじゃない。
「何さっきから難しい顔したり、怒った顔したりしてんの?」