皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「…してた?」
「してたぞ?」
前を歩いていた黒川君が顔だけ振り向き、校門から出た所で足が止まる。
外では車が走る音、何処か近くで工事をしている音が行き交うなか、背の高い彼の横に並んで何かを待つ。
「何か変な事考えてた?」
「え?」
右手で携帯を持ちながら、特に私の顔を見ないで走る車を左右確認している。
「まぁ、大丈夫っしょ。なんとかなるって。」
「何その適当さ。」
「アハハ。いやだって、そうじゃない?悩んでも悩んでも解決しないなら悩むの馬鹿くさくない?それなら違う事しようよって感じ。」
悩んでも 悩んでも 解決しない
毎日悩んでいるよ
解決策も何もないよ
お父さんのこと
生活費のこと
明日の米のこと
黒川君のこと
馬鹿くさくない?
それなら悩みの種を増やさないで欲しいよ。
なんとかなるって?違うよ黒川君。
「私が何とかしてるのよ。」
「……カッコいいじゃん。あ、来た。」
会話してもこれから何処に行くのか情報も何も得ないまま、白いワンボックスカーが彼の前で停まり、勝手に開くスライドドア。彼が頭を下げてスッと座席に乗り込む。
私も続けて乗ろうとしたら、運転席にいるのはいつものあの人。
「お疲れ様~秀紀さん。ほら、幸子早く乗って。」
「あ、うん。」
乗ったのはいいけど、閉めかたわからず横をキョロキョロしていたらまたしても勝手に閉まるドア。