皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

「幸子ちゃん体調アレなら配信今日じゃなくてもいいんじゃないのか?」
「いいんだよ、大丈夫。見てるだけだし。」
「手伝い…じゃないの?」
「俺の姿を見るのが幸子の仕事だよ。」


聞いても理解出来ない内容なので、黙って二人の会話を聞く。
座っている椅子の革の素材が落ち着かない。なんか高そうだなこの車。

そこまで車を走らせず、遊泳禁止の特に何もない海岸に着く。
私を含め、地元民にしたら流木やゴミがある砂浜に、あまり綺麗とは言えない波の色。人すら歩いていないいつもの風景。


の、筈が、



「お疲れ様で~す。お願いしま~す。」
「お疲れ様です。」
「お疲れ様~瑠色着替えて。」


リュックは車内に置き、車を降りてコンクリートの防波堤から海に降りる階段を使って周りを見渡すと、大人の男女含めた数人が、何やら比較的ゴミが落ちていない砂浜に椅子やら道具を持って黒川君を待っていた。

天気は良いが、海沿いの為相変わらず強風が時折吹き荒れている。


どうしていいのかわからず、防波堤の階段で足が止まる。と、後ろから車を停めた秀紀さんが


「今日ね、14時からライブ配信するんだよ。時間も時間だからそこまでユーザーも居ないけどね。」
「は、はぁ…。」


ごめんなさい、何をおっしゃってるのか全然わかりません。
黒川君より大人の秀紀さんと話す方が無知でごめんなさいと申し訳なく感じてしまう。


制服を脱いだ黒川君がいつの間にか私服に着替えており、椅子に座って女の人が髪の毛をセットしている。

白いインナーにボタンを留めていないスカイブルーのシャツ。
黒いピチピチしたズボン?パンツ?というの?
足が長いのに、更に足長効果?
お洒落過ぎて、反比例で強風の風でぐちゃぐちゃになっている私の髪や顔が無様過ぎる。

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