皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「こんな時間だけど何万観てるのかな、え~と数万人視聴してるよ。」
「は!?数万人!?」
「夜とかだったら余裕で数十万人とかいくよ。」
「!?」
数が莫大過ぎてもう意味がわからない。
「彼ね、最初のデビューはグループで活動してたんだけど、彼だけ才能…というか存在が飛び抜けてて、グループの中で格差が凄くなって。
卒業という名の脱退だよね。
ソロの方が売れるというか、グループでいるより単体の方が伸び伸びさせてあげられるし。俺も元々彼のグループのマネージャーだったんだけど、会社に志願して、彼の成長を一番近くで見たいから専属のマネージャーにさせてもらったのよ。」
「………。」
「凄いよ?彼、若いのに完成してる。だけどまだ先にいこうとするんだ。自信はあるけどストイックだし、どんな仕事も妥協しないし。」
「………。」
「幸子ちゃん。」
自分の立場をわきまえて
彼の邪魔はしないでね?
優しい口調で話していた秀紀さんが、一瞬強風で声が遮ったが私にはハッキリ聞こえた。
秀紀さんがちょっと見てくるねとその場から離れ、はしゃぐ黒川君の側に歩いていった。
警告をされた言葉に
胸がえぐられたような、
さっきまでドキドキしていた心臓が、同じドキドキなのにこんなにも違う。
「ちょっと!ガチでいる!」
「キャー瑠色ー!!!」
「ヤバいヤバい!」
は!と周りを見ると、防波堤から聞こえてくる女子達の声。
治まらない動揺に震える手で携帯を見ると、ここの場所の住所が連続して書いてあるコメントを見つけ、それを見た人が集まってきている。
「あ~ぁ、バレちゃった。てことで配信終わり。またね~。」
黒川君が笑顔で手を振って、気付くと配信が終わっていた。